勤怠管理にタイムレコーダーやタイムカードを採用している企業の場合、従業員の「打刻忘れ」に頭を抱える労務担当者は少なくありません。
この記事では、タイムカードの打刻忘れに対する企業の対応方法や、労務管理上のリスクについて解説します。
今日から実行できる「打刻忘れを防止する対策」も紹介しますのでぜひ参考にしてください。
1.打刻を忘れても欠勤扱いはNG!
従業員が打刻を忘れたからといって「出勤しなかったことにする」という対応は労働基準法違反となるためNGです。
打刻を忘れた場合に企業がどのように対応すべきかを以下4つのポイントでまとめました。
- 打刻忘れが判明した時点で対応が必要
- 打刻修正のフローを用意する
- 打刻なし=欠勤は法律違反
- ペナルティを設ける場合の注意点
それぞれ詳しく説明します。
(1)打刻忘れが判明した時点で対応が必要
勤務時にタイムカードを押し忘れた、退勤時にタイムカードを押さずそのまま退社した、などの打刻忘れは誰でも起こり得ます。
正確な労働時間を記録するのがタイムカードの役割。
従業員や管理者が打刻忘れに気づいた場合はすぐに修正の対応を行うようにしましょう。
何時に出勤(もしくは退勤)したか、思い出せるうちに修正することが大切です。
修正対応が月末に集中すると労務担当者の負担が大きくなります。
(2)打刻修正のフローを用意する
打刻忘れがあった場合の対応フローは企業側であらかじめ用意しておきましょう。
本人から上長へ修正依頼をする、上長から労務担当へ報告する、など、一連の流れを決めておくとスムーズです。
本人や上長が打刻忘れに気づかず、給与計算時に打刻忘れが判明した場合のフローも定めておくと、労務担当者の負担軽減に繋がります。
(3)打刻なし=欠勤は法律違反
打刻されていないことを勤務していないとみなして遅刻や欠勤扱いとするのはNGです。
実際に勤務をしている従業員に賃金を支払わないことは労働基準法に反します。
労働に対して賃金を支払うのは企業の義務です。
タイムカードの打刻は勤務時間の記録方法としての手段に過ぎず、労働があったかどうかとイコールで考えるものではありません。
(4)ペナルティを設ける場合の注意点
もし打刻忘れを処罰の対象とし、ペナルティを設ける場合、以下2つの要件を満たす必要があります。
- 就業規則に「打刻忘れは服務規律違反であり処分対象となる」旨が明記され、これが従業員全員に周知されていること
- 減給など賃金に関わるペナルティの場合、労働基準法で定められた金額の範囲であること(1回の額が平均賃金の1日分の半額を超えない、かつ総額が一賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えない範囲)
ただし、打刻忘れをいきなり減給処分とするのはトラブルの元。
まずは口頭注意や反省文など、軽めのペナルティのみで対応するのが一般的です。
2.なぜ打刻忘れが起きるのか
打刻忘れが起こる原因はいくつかあります。
ここでは打刻忘れの発生原因として多いものを3つ紹介します。
- 打刻できる場所(設置場所)の問題
- 打刻の手間がかかる
- 習慣化されていない
打刻忘れする従業員が多い職場の場合、当てはまるものがあるかもしれません。
ぜひご一読ください。
(1)打刻できる場所(設置場所)の問題
タイムカードの打刻場所が悪いと打刻忘れは起こりやすくなります。
目立たない場所や、意識しないと通らない場所は設置場所に向いていません。
また、出張や直行直帰が多い仕事の場合も打刻漏れが多くなりがちです。
事業所以外でも打刻が可能な方法(PC打刻やモバイル打刻など)を用意する必要があります。
(2)打刻の手間がかかる
打刻完了までにいくつかのステップがある、打刻の処理完了までに時間がかかるなども打刻忘れを増やす要因です。
特に出勤時間は打刻する人が集中し、タイムレコーダー前が混雑します。
混んでるから後回しにしようと考え、結局忘れてしまうケースも出てくるでしょう。
(3)習慣化されていない
職場全体で打刻の習慣化ができていないと打刻忘れは起きやすくなります。
テレワーク時と出社時で打刻方法が違う場合や、新しい打刻方法を導入した場合には、社内ルールを整備し、運用方法を浸透させることが重要です。
3.打刻忘れが企業にもたらすリスク
打刻忘れによって勤務時間の記録が不正確になることは企業にとって大きなリスクです。
打刻忘れを放置することによって起こりうる損害を2つ紹介します。
(1)給与計算や労働時間管理が不正確になる
タイムカードの打刻忘れは労働時間管理や給与計算に影響します。
出退勤時刻に抜け漏れがあれば勤務時間を正確に把握できません。
また、打刻修正が多いと、仮に不正な打刻があっても見つけるのが難しくなります。
勤務実態を的確に把握し、従業員の給与や残業代を正しく支払うためにも正確な打刻が重要です。
(2)人事や労務担当の仕事が増える
打刻忘れが発生すると、入館証や監視カメラのチェック、パソコンのログ確認など人事や労務担当の業務が増えます。
本来必要のない業務によって人事・労務担当者の残業が発生したり、生産性が低下するのは企業にとって経済的な損失です。
また、打刻忘れを発端とした給与未払いへの対応や、不満を持った社員による退職手続きなどが起こればさらに通常業務が滞ります。
働き方改革を推進すべき立場である人事・労務担当者の負担を減らすためにも、打刻の漏れは防がなければいけません。
4.打刻忘れを防止する5つの方法
(1)打刻場所を工夫する
すぐにできる対策として挙げられるのが打刻場所の変更です。
打刻場所が視界に入ればタイムカードを押すことに意識が向くので、打刻忘れを防止できます。
出社したら必ず通る目につく場所にタイムレコーダーや打刻端末を置くようにしましょう。
事業所の出入り口付近や始業前に必ず利用するスタッフルームなどがおすすめです。
(2)張り紙で打刻を促す
出社・退社する際、必ず目につく場所に張り紙をすることも、打刻忘れ防止に効果的です。
職場の壁、机、個人のパソコンに打刻を促す文言を張り紙しておくと、いつでも思い出す事ができます。
また、打刻忘れが多い人にはチャットツールのリマインダーで通知したり、スマートフォンのアラーム機能を使ってもらうなどの方法もあります。
(3)社員同士声掛けをする
打刻忘れが多い場合は、チームごとに打刻確認の担当者を決めて、声掛けを行う方法もあります。
自分以外の人から声掛けがあれば打刻を思い出すことができますし、打刻担当の人は責任感を持って呼びかけを行えるはずです。
担当者を定期的に交代することで、打刻忘れ防止の重要性を全員に理解してもらうことができます。
(4)打刻の方法を簡単にする
打刻忘れが起きる原因として、手間や時間がかかることは先述しました。
これらの原因を解決するために、打刻方法を簡単にするのも一つの手です。
スマホやPCから打刻する方法や、社員にICカードをかざす方法、指紋認証や顔認証などの方法もあります。
今まで紙のタイムカードで、棚から探すのが大変だった場合には特に効果的です。
(5)勤怠管理システムの導入
タイムカードを廃止し、勤怠管理システムを導入することで労務管理の方法を根本から効率化する事ができます。
勤怠管理システムでは出退勤時刻、時間外労働、深夜労働、休日出勤、有給取得日数などをまとめて一元管理できます。
打刻方法はICカード、生体認証、PCやスマートフォンのブラウザ経由などいくつも用意されており、職場以外での打刻も可能です。
無料で利用開始できるものもありますが、シフト管理システムや給与計算システムとの連携が可能なシステムは有料の場合がほとんどです。
勤怠管理システムを選ぶ際は、自社の業種にあった機能がそろっているか、従業員が直感的に使えるかどうか考えるようにしましょう。
5.おわりに
タイムカードの打刻を忘れた場合の対処法や、打刻忘れを防ぐための方法、打刻忘れによる企業側へのリスクについて紹介しました。
企業には従業員の労働時間を把握する義務があります。
正確な打刻に基づく労務管理のためには打刻忘れしづらい勤怠管理方法を採用すべきです。 企業の不正リスク軽減や労務関連業務のコスト削減のためにも、勤怠管理システムへの移行をおすすめします。
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