1.勤怠管理表とは
従業員の出勤状況を個別にまとめたものを勤怠管理表(勤怠表)といいます。
出退勤時刻、休日出勤、休暇などの情報を整理するための書類で、給与計算に使われます。
書式に指定はなく、エクセルで作成する企業や勤怠管理システムを利用する企業などさまざまです。
(1)勤怠管理表の保管義務
労働基準法第108条では勤怠情報の記録が義務付けられています。
条文では「賃金台帳に賃金計算の基礎となる事項、賃金額を賃金支払の都度遅滞なく記入」することが定められており、勤怠管理表が賃金台帳にあたります。
記録を怠ると「賃金台帳調整義務違反」となり、30万円以下の罰金が科せられるため注意しましょう。
(2)勤怠管理表の保管期限
労働基準法第109条では「労働関係に関する重要な書類は5年間保存しなければならない」と定められており、勤怠管理表もこれに含まれます。
3年経過前に廃棄すると108条同様の罰金が適用される可能性があります。
2.勤怠管理表の目的
(1)適切な労務管理
従業員がいつ・どのくらい働いたか、残業が生じたかなどを把握することは適切な労務管理を実現する上で不可欠です。
時間外労働や休日出勤が過剰にならないようコントロールすることが、従業員の健康維持に繋がります。
また、賃金を正確に支払う上で勤怠管理表はマストです。
法定労働時間を超えた分は賃金割増が発生します。
また、法定休日労働は1.35倍、深夜労働なら1.25倍など割増率が異なるため、複雑な給与計算を正確に行うためにも、労働時間数や時刻の記録が重要です。
(2)法律の遵守
労働衛生安全法第66条では、企業が労働者の労働時間を正確に把握することが義務付けられています。
また、1日8時間・週40時間以内の「法定労働時間」を超えて残業を行う場合は労働基準法第36条に基づく労使協定(サブロク協定)の締結や所轄労働基準監督署長への届け出が必要です。
これらの法律を遵守する上で勤怠管理表は重大な役目を担っています。
3.勤怠管理表の記載項目
(1)出勤・退勤時刻
全ての基本となる項目が出勤時刻、退勤時刻です。
正確な労働時間や残業時間の算出に使われます。
(2)労働時間
出勤〜退勤までの時間から休憩を除いた時間が1日の労働時間となります。
シフト勤務の場合は休憩時間の指定が必要です。
(3)残業時間・深夜残業時間
所定労働時間を超えた分は残業時間として計算します。
残業時間が法定労働時間(8時間)を超えた場合は25%の割増賃金を支払うことが義務付けられています。
さらに、22時を超えた場合は25%の深夜割増を支払う必要があります。
(4)休日労働時間
法定休日に出勤する場合、企業は35%以上の割増賃金を払うことが法律で決められています。
法定休日は「週1回または4週に4回以上の休日」のことです。
所定休日(事業所独自の休日)に出勤の場合は割増賃金の支払いは必要ありません。
(5)遅刻・早退
遅刻や早退も勤怠管理表に記録します。
労働時間が所定労働時間に満たなければ控除となるケースもあります。
(6)欠勤日数
労働することになってる日に出勤しない状態が「欠勤」です。
欠勤は有給休暇と違い、給与が支払われません。
有給休暇を使い切った後に休む場合は欠勤扱いになります。
(7)有給休暇の取得日数
各自に付与された有給休暇の取得日数も勤怠管理表で把握する必要があります。
働き方改革関連法により、年に10日以上有給休暇を付与されている従業員には必ず5日以上取得させることが企業に義務付けられました。
4.勤怠管理表の作成方法
勤怠管理表には決まった書式がなく、作成方法も企業によってバラバラです。
ここからは定番の勤怠管理表作成方法を3つ紹介します。
(1)手書きの出勤簿
5人以下の小規模事業所であれば手書きの出勤簿を使っている場合があります。
従業員が出勤時と退勤時に時刻を出勤簿に記入する方法です。
導入費用は最も安上がりですが、転記ミス、計算ミス、紛失などのリスクがあります。
紙で管理するため保管のコストも必要です。
また、2019年の労働安全衛生法改正により、「自己申告による勤怠記録のみ」では、適切な勤怠管理方法として認められなくなりました。
そのため、手書きで運用する場合はタイムカードや勤怠システムでとの併用が必要です。
(2)エクセルで作成
勤怠管理表はエクセルで簡単に作成できます。
Web上で「勤怠管理表」「勤務表」などで検索すると、無料のテンプレートがたくさんヒットします。
例えばMicrosoft Office公式サイトでもExcelで使える勤怠管理表のテンプレートを配布しています。
気軽に使いやすい点はメリットですが、入力ミスをしやすいことや従業員数が多い場合手間がかかる点などは弱点でもあります。
また、給与計算まで一元管理できない部分もExcelのデメリットです。
(3)勤怠管理システムの活用
勤怠管理表作成の手間を削減し、最新の法律に適応できる方法として、システムの活用が挙げられます。
従業員の打刻タイミングによって、残業時間や休憩時間、休日出勤などを自動で判定可能です。
勤怠管理システムによっては、シフト管理システムとセットで使えるもの、給与計算システムと連携が可能なものがあります。
無料の方法と違って導入コストや運用コストがかかるものの、労務担当者と従業員双方の負担が最も少なく、効率的な作成方法です。
5.おわりに
勤怠管理表を利用する目的や保管期間、記載事項、作成方法について紹介しました。
勤怠管理表は従業員の労働環境を守る上で重要な存在です。
2019年以降、働き方改革関連法施行や新型コロナによる働き方の多様化で、企業の労務管理のあり方が問われています。
ミスなく効率的に勤怠管理や給与計算を行うためには、デジタル化による業務効率の向上が必須です。
シフト管理や給与計算とあわせてシステム化することで、労務関連業務の負担軽減にも繋がります。
ぜひ勤怠管理システムの導入を検討してみてください。
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