近年、働き方改革による労働生産性の向上を目的に、ペーパーレス化が政府主導で進められています。ペーパーレス化には、勤怠管理ツールの導入やOCRの活用、クラウドストレージの利用などの方法があります。基礎知識を身につけたうえで、自社に最適な形でペーパーレス化を進めることが大切です。
本記事では、ペーパーレス化の意味や目的、メリット、方法などについて詳しく解説します。
1.ペーパーレス化とは
ペーパーレス化とは、紙を電子データに変換し、活用・保存することです。従来の紙ベースの文書や資料の電子化によって、業務プロセスの効率化や経費削減を図ることができます。
また、紙媒体から電子媒体への移行だけでなく、電子書籍や電子チケットなど、さまざまな形態で紙の使用を削減することもペーパーレス化の1つです。
テクノロジーの進化やデジタル化の推進に伴い、多くの企業や個人が効率向上と環境への配慮を両立させる手段として積極的に導入しています。
2.ペーパーレス化が注目されている理由・メリット
ペーパーレス化は、単なる業務効率化だけでなく、さまざまなメリットがあります。ペーパーレス化が注目されている理由・メリットについて詳しく見ていきましょう。
(1)環境の負荷軽減と企業イメージの向上
ペーパーレス化によって、紙の製造にかかる資源の消費と廃棄物を削減できます。紙の製造には木材が必要であり、これによる大規模な森林伐採が環境に影響を与えます。また、製紙工程や印刷には多くの水やエネルギーが使用され、これも環境への負担となります。ペーパーレス化によりこれらの資源の使用が減少し、環境への影響の軽減が可能です。
また、ペーパーレス化は環境問題やサステナビリティへの取り組みの一環と捉えられ、企業がこのような取り組みを積極的に行うことで、環境への貢献をアピールできます。その結果、企業イメージの向上につながります。
(2)業務効率と生産性の向上
電子文書をクラウドストレージに保存することで、複数人での情報共有が容易になります。クラウドストレージは詳しくは後述しますが、インターネット上に存在するさまざまなデバイスからアクセスできるストレージのことです。
IDとパスワードがあれば閲覧できるため、複数人でファイルを容易に共有できます。検索機能も優れており、ファイル名や中の文字列を検索できるため、必要な情報へのアクセスが迅速に行えます。そのため、業務効率化や生産性の向上につながるでしょう。
(3)ストレージコストの削減
ペーパーレス化すると、物理的なファイルや文書の保管にかかるスペースやコストが不要になり、クラウドやサーバーを利用してデジタルデータを管理できます。
これにより、保管コストを最小限に抑えつつ柔軟で効率的なデータ管理が可能となります。
(4)セキュリティ性の向上
デジタルドキュメントは、物理的な文書よりも優れたセキュリティ対策が可能です。アクセス権の制御や暗号化、バックアップの実施などが可能であり、情報漏洩やデータ紛失のリスクを低減します。これにより、機密性の高い情報や個人情報の安全な管理が実現され、組織全体の信頼性が向上します。
3.ペーパーレス化の課題
ペーパーレス化の実施には、いくつかの課題があります。次の課題を理解し、解決したうえでペーパーレス化を進めることが大切です。
(1)セキュリティの懸念
ペーパーレス環境では、データがデジタル形式で保存されるため、ハッキングや不正アクセスによるデータ漏洩のリスクが増加します。組織は強固なセキュリティ対策を講じ、暗号化やアクセス制御などの手段でデータを守る必要があります。
ただ、既存ツールに搭載されたセキュリティ機能を活用し、高度なセキュリティ対策を容易に実装できます。
そのため、物理的なファイルよりもセキュリティ性が高いことに変わりはありません。
(2)システム障害への対応
ペーパーレス化には、適切なITインフラとソフトウェアの導入・整備が必要です。システムの障害やアップデートによる問題が発生すると、情報へのアクセスが制限される可能性があります。その結果、業務が滞ることも考えられるため、バックアップやメンテナンスなどで対策しなければなりません。
(3)トレーニングの必要性
ペーパーレス環境への移行により、ツールの利用方法やセキュリティに対する意識などを伝える必要があります。従業員への適切なトレーニングが行われないと、業務効率化が妨げられる可能性があります。また、ペーパーレス化のメリットや意義について理解を求めるために、なるべく1人ずつ面談することも検討しましょう。
4.ペーパーレス化の進め方
ペーパーレス化は、いきなりツールを導入すると失敗する恐れがあります。独立行政法人中小企業基盤整備機構が推奨しているペーパーレス化の進め方を参考に、正しい手順を解説します。
(1)職場にある書類を棚卸する
まずは職場にある書類を棚卸し、ペーパーレス化する書類をリストアップします。これにより、現行の文書管理状況を把握し、どの書類をデジタル化するかを検討できるようになります。
(2)ペーパーレス化する書類を決める
書類を仕分けし、電子化が適しているか、または紙で残すべきかを検討します。一気に全ての書類をペーパーレスにするのは難しいため、高い効果が期待できる書類から着実に進めていきましょう。
従業員にとって効率的で役立つものから取り組むことで、ペーパーレス化の受け入れがスムーズに進みます。
例えば、会議資料や企業のパンフレット、契約書などをペーパーレス化することで、印刷・配布の手間やコストを削減し、効率的に業務が行えるようになります。
(3)ペーパーレス化後の業務プロセスを検討する
ペーパーレス化に伴い、業務プロセスを見直すことが必要です。電子文書の効率的な利用と管理を維持するために、ワークフローシステムの導入や承認プロセスの変更を検討しましょう。たとえば、社内稟議や申請書類などを電子化し、効率的な承認プロセスを構築することで業務の迅速かつ円滑な進行が期待できます。
(4)電子化する書類の整理方法を決める
ペーパーレス化においても、書類の整理が重要です。整理のためには、ファイル名の命名規則や保管場所、共有範囲、保存年限などのルールを事前に定めておく必要があります。
特に過去の文書を電子化する場合には、書類サイズ、解像度、ファイル形式などを設定し、統一性を保つことが望ましいです。これにより、効果的で整頓されたデジタルな文書管理が実現できます。
5.ペーパーレス化に役立つツール
ペーパーレス化には、次のようなツールが役立ちます。
定義 | アクセス方法 | 効果・メリット | 適用例 | |
勤怠管理ツール | Web上で労働状況を管理するシステム | ・パソコン ・スマホ ・タブレット ・ICカード ・生体認証 等 | ・コスト削減 ・効率向上 ・出張や在宅勤務にも適用可能 | ・勤怠管理 ・出退勤記録 ・給与計算 |
OCR (Optical Character Recognition) | 紙の書類をスキャンし、画像データを認識・変換する技術 | スキャナーやカメラを用いて、紙の書類をデータに変換 | 紙資料のデータ化、整理、検索の効率化 | ・紙資料の電子化 ・検索可能なデータ化 |
クラウドストレージ | データ化された資料を保存・管理するためのクラウドベースのストレージ | インターネット接続 | ・いつでもどこからでもアクセス可能 ・保守、管理の手間削減 | ・データの保存、共有 ・外部との情報共有 ・チームでの共同作業 |
6.おわりに
ペーパーレス化には、勤怠管理ツールやクラウドストレージなどさまざまなツールの導入が必要です。中でも勤怠管理ツールは勤怠管理の効率化やセキュリティ性の向上につながるため、積極的に導入したいところでしょう。今回、解説した内容を参考に自社に適した形でペーパーレス化を進めてください。
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