勤怠管理は、適切な労働者の雇用および労働を実現するために、労働基準法によって管理方法が規定されています。
適切に行わない場合は、労働基準法違反に問われる恐れがあります。
本記事では、厚生労働省が示すガイドラインをもとに、勤怠管理の労働基準法における取り扱いと効率的な方法について詳しく解説します。
1.勤怠管理と労働基準法の関係
勤怠管理が労働基準法上どのように位置づけられているかは、厚生労働省が策定した「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」で具体的に示されています。
同ガイドラインは、使用者が果たすべき労働時間管理の責務を明確化するために策定されました。
ここではその趣旨、対象範囲、そして基本となる労働時間の考え方について解説します。
(1)ガイドラインの趣旨
使用者には、労働基準法に定められた労働時間や休日、深夜業などの規定を守るため、労働時間を適正に把握する責務があります。
しかし実際には、労働者が自己の労働時間を自主的に申告する自己申告制が不適正に運用され、法定労働時間を超える過重労働や割増賃金の未払いといった問題が生じているケースが少なくありません。
こうした実態を踏まえ、厚生労働省は平成29年、使用者が講ずべき具体的な措置を明らかにするガイドラインを策定しました。
同ガイドラインは、単なる指針ではなく、労働基準法違反を未然に防ぐための実務的な行動基準として位置づけられていると言えるでしょう。
(2)ガイドラインの対象範囲
ガイドラインが対象とする事業場は、労働基準法のうち労働時間に関する規定(第4章)が適用される全ての事業場です。
また対象労働者は、同法第41条に定める管理監督者などや、みなし労働時間制が適用される労働者(事業場外労働の場合はみなし労働時間制が適用される時間に限る)を除く、すべての労働者とされています。
管理職だからといって労働時間管理が一切不要になるわけではありません。
健康確保の観点から適正な労働時間管理を行う責務は使用者に残ります。
したがって、自社のどの従業員がガイドラインの直接の対象になるかを正しく把握したうえで、管理体制を整えることが欠かせません。
(3)労働時間の考え方
ガイドラインでは、労働時間を「使用者の指揮命令下に置かれている時間」と定義しています。
使用者の明示または黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は、すべて労働時間に該当するという考え方です。
たとえば、着替えや後始末など業務に必要な準備行為を事業場内で行った時間、指示があればすぐに業務に従事できるよう待機している「手待時間」、業務上義務づけられた研修や教育訓練を受講している時間なども労働時間に含まれます。
労働契約や就業規則の定めにかかわらず、実態として指揮命令下にあったかどうかで客観的に判断される点が重要と言えるでしょう。
2.勤怠管理が重要な3つの理由
勤怠管理は単なる事務作業ではなく、企業経営の根幹に関わる重要な取り組みです。
労働基準法を遵守するためだけでなく、従業員の健康を守り、企業を思わぬトラブルから守るためにも欠かせません。
ここでは、勤怠管理が重要とされる代表的な3つの理由を、それぞれの背景とともに解説します。
自社の勤怠管理体制を見直す際の参考にしてください。
(1)労働基準法を遵守するため
勤怠管理の第一の目的は、労働基準法を遵守し、法令違反を防ぐことです。
労働基準法では法定労働時間や割増賃金の支払いなどが厳格に定められています。
違反した場合は罰則の対象となることもありえます。
例えば、残業時間を正確に把握できていなければ、割増賃金の未払いが発覚し、労働基準監督署から是正勧告を受ける事態にもなりかねません。
適正な勤怠管理は、こうした法令違反を防ぐための土台と言えるでしょう。
(2)従業員の健康を守るため
第二の理由は、従業員の心身の健康を守ることです。
長時間労働が常態化すると、過労による健康障害やメンタル不調のリスクが高まり、最悪の場合は労災や過労死に発展するおそれがあります。
実際に、労働時間を正確に把握できていない職場では、残業が特定の従業員に偏っていることに気づけないケースも。
勤怠管理を徹底することは、健康リスクを早期に発見し、働きやすい職場づくりにつながります。
(3)労使トラブルを防ぐため
第三の理由は、労使間のトラブルを未然に防ぐためです。
勤怠の記録が曖昧なままでは、残業代の未払いや不当な労働時間の主張など、労働者との認識のズレからトラブルに発展しやすくなります。
特に近年、退職後に未払い残業代を請求されるケースも増えています。
客観的な記録がなければ企業側が不利な立場に置かれかねません。
日々の勤怠を正確に記録しておくことが、労使双方にとって安心できる関係づくりの第一歩です。
3.勤怠管理の具体的な方法
勤怠管理を行う方法にはさまざまな選択肢があり、それぞれメリットと注意点が異なります。
自社の規模や働き方、コストなどの条件によって最適な方法は変わってくるでしょう。
ここでは、代表的な5つの勤怠管理の方法を取り上げ、それぞれの特徴と、厚生労働省のガイドラインに照らした際の留意点を解説します。
(1)タイムカード
タイムカードは、専用の機械(タイムレコーダー)に勤務者がカードを通すことで、出退勤時間を自動的に記録する方式です。
従業員は簡単に出退勤を記録でき、管理者は手作業での勤怠集計の手間を削減できます。
一部のタイムレコーダーはPCに接続して自動で労働時間を集計するため、作業の簡略化が可能です。
一方で、打刻漏れが発生しやすく、手作業での集計が必要なため、時間的なコストがかかります。
また、タイムカードは印刷物として残り、その保管にはスペースが必要です。
さらに、複数の拠点がある企業では各拠点からタイムカードを集める作業が必要なため、手間と時間を要します。
(2)出勤簿
従業員が勤務時間を手書きで記入し、それを集計して労働時間を算出する勤怠管理方法です。
フォーマットを作成すれば、紙代以外にはコストがかからず、手軽に始められます。
ただし、自己申告制に基づく出勤簿は、法的な規制が存在します。
法令やガイドラインでは、労働者の自己申告制を原則認めず、特別な措置が必要とされています。
これは、正確な労働時間の把握が難しく、記入漏れが生じやすいためです。
また、手動の集計作業が発生し、保管にはスペースが必要で、書類が紛失するリスクもあります。
(3)エクセル
エクセルによるタイムカードの集計は一般的に広く利用されています。
エクセルは導入コストが低く、テンプレートの利用や数式の組み立てが容易であり、カスタマイズ性が高い点がメリットです。
デメリットとして、「客観的な記録の要件を満たしていない可能性」が指摘されています。
手作業が多く、作業工数が増加するため、従業員ごとのデータを再チェックする必要も。
柔軟な働き方に対応することが難しく、在宅ワークやフレックス勤務導入の障壁になるでしょう。
(4)自社開発のシステム
自社開発のシステムは、企業が独自のニーズに合わせて開発・導入した勤怠管理システムやタイムカードシステムのことです。
カスタマイズ性が高く、企業の特有の要件に柔軟に対応できます。
また、勤怠管理に関する機能を独自に組み込むことで、業務プロセスの最適化も可能です。
セキュリティ面でも、企業が独自の要件を組み込むことで、データや機密情報を高度に保護できるでしょう。
ただし導入やランニングコストが高いため、費用対効果を十分検討する必要があります。
(5)勤怠管理システム
勤怠管理システムは、タイムレコーダーやデバイスと連携して打刻からデータ集計・分析まで一元管理するツールです。
クラウドサービスで提供されているものも数多くあります。
WEB打刻やICカード、指紋認証、顔認証、GPSなどさまざまな手段で打刻できます。
リアルタイムでの管理、給与システムとの連携、柔軟な打刻手段、クラウドサービスでの遠隔勤怠管理など、利便性に優れていることが特徴です。
また、客観的な記録が求められるため、従業員や企業の雇用形態に合ったシステム選定が必要です。
打刻ミス防止や使いやすさ、業務負担、企業の雇用状況に適した管理方法かを検討しましょう。
4.勤怠管理を効率化する3つのポイント
勤怠管理を正確に行うには、単にツールを導入するだけでなく、運用面の工夫も欠かせません。
日々の勤怠管理をより効率的かつ適正に進めるための3つのポイントを紹介します。
自社の運用を見直す際のヒントとして役立ててください。
(1)客観的な記録方法を採用する
自己申告に頼らず、客観的な記録方法を採用することが効率化への第一歩。
厚生労働省のガイドラインでも、タイムカードやICカードなど客観的な記録を基礎とすることが原則とされています。
自己申告制はやむを得ない場合の代替手段と位置づけられています。
手書きの出勤簿から打刻式のシステムに切り替えるだけでも、打刻漏れや記入ミスを大幅に減らせるでしょう。
客観的な記録を基盤に据えることで、効率化と適正な管理を実現できます。
(2)打刻ルールを明確にし、全従業員に周知する
二つ目のポイントは、打刻のルールを明確にし、全従業員へしっかりと周知することです。
打刻方法や休憩時間の扱いなどが曖昧なままでは、従業員ごとに解釈が分かれ、記録の精度にばらつきが生じやすくなります。
出退勤の打刻タイミングが統一されていない職場では、残業時間の集計に食い違いが生じます。
給与計算のやり直しが発生することも少なくありません。
ルールを明文化し周知を徹底することで、勤怠データの信頼性を高められるでしょう。
(3)データを一元管理し、日々の状況を可視化する
三つ目は、勤怠データを一元管理し、日々の労働時間の状況を可視化することです。
部署や拠点ごとにデータが分散していると、全社的な残業状況や休暇取得状況を把握するまでに時間がかかり、問題の発見が遅れます。
クラウド型システムでダッシュボード化すれば、管理者はリアルタイムで残業時間の偏りや有給消化率を確認でき、早めに是正の声かけを行えるでしょう。
データを可視化する仕組みを整えることが、効率的な勤怠管理を実現する鍵になります。
5.勤怠管理にクラウドシステムを活用するメリット
勤怠管理には労働基準法やガイドラインに沿った厳格な対応が求められるもの。
近年、多くの企業がタイムカードやエクセルによる管理から、クラウド型の勤怠管理システムへの移行を進めています。
ここでは、クラウドシステムを活用することで得られる主なメリットをまとめました。
(1)場所や時間を問わず打刻・管理ができる
クラウド型の勤怠管理システムは、場所や時間を問わず打刻や勤怠確認が可能です。
スマートフォンやパソコンからいつでもアクセスできるため、在宅勤務や直行直帰といった多様な働き方にも柔軟に対応できます。
拠点が複数ある企業でも、各拠点のデータをリアルタイムで本社が把握でき、集計のためにわざわざ書類を集める手間がかかりません。
働き方が多様化する中で、場所を選ばない勤怠管理の仕組みは今後ますます重要になるでしょう。
(2)客観的な記録でガイドラインの要件を満たしやすい
勤怠管理システムは、厚生労働省のガイドラインが求める客観的な記録の要件を満たしています。
打刻データがサーバー上に自動で記録されるため、手入力による改ざんや入力漏れのリスクを抑えられます。
ICカードや生体認証と連携した打刻方法を採用すれば、不正打刻の防止にもつながるでしょう。
客観的な記録を基礎とした管理体制は、労務トラブルの予防にも役立つはずです。
(3)集計や給与計算の負担を軽減できる
集計や給与計算にかかる業務負担を大きく軽減できる点も勤怠管理システムのメリットです。
打刻データが自動で集計されるため、担当者が手作業でタイムカードを計算する必要がなくなります。
また、給与計算システムと連携できるクラウドサービスも多く、勤怠データから残業代や控除額を自動で反映させることも可能です。
労務関連の自動化によって、担当者はより付加価値の高い業務に時間を割けるようになります。
(4)法改正やガイドラインの変更に対応しやすい
法改正や制度変更に迅速に対応できることもシステムのメリットです。
労働基準法や関連するガイドラインは、社会情勢の変化に応じて改正されることがあります。
クラウドサービスであれば、提供事業者側でシステムがアップデートされるため、企業が自ら大掛かりな改修を行う必要がありません。
常に最新の法令に沿った運用を続けられます。
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