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左遷(させん)とは?出向・異動との違いや理由・注意点を解説

面談をする上司と部下 未分類

「ミスを繰り返す従業員がいる」、「人間関係でトラブルを繰り返している」

このような従業員を左遷しようと考えているものの、出向や異動と何が違うのか、法的に問題はないのかなど、さまざまなことが気になるでしょう。本記事では、左遷とは何か解説するとともに、出向や異動との違いや行う理由、注意点などについて詳しく解説します。

1.左遷(させん)とは

左遷(させん)とは、従業員を現在よりも低い地位や役職に異動させることです。仕事が少ない部門や部署に配置転換する行為そのものを指す言葉でもあります。

語源は、中国における「右を尊び、左を下に見る」との文化に由来しています。左遷と降格はほぼ同義語です。

企業が人事異動を行う理由は多岐にわたり、主な目的は組織の強化や成長です。従業員数の調整やキャリアアップを促進するために異動を行います。

通常、会社は異動の際に「左遷」という言葉を使用しませんが、客観的には降格と見なされる異動や、本人が望まない部署への異動が一般的に左遷と呼ばれます。左遷とは対照的に、キャリアにプラスの影響をもたらす「栄転」と呼ばれる異動も存在します。

しかし、異動がマイナスに思われる場合でも、当事者の受け取り方や会社の意図によって、必ずしも左遷とは限りません。たとえば、閑職への異動であっても、本人にとって適した仕事であれば左遷とは言えないでしょう。子会社への異動であっても、経験を積んで本社に戻ることが前提とされる場合、それは左遷ではなく栄転と見なすことができます。

また、スキルのある人材が不足している部署に補強として配置される場合も考えられます。

2.出向との違い

出向は、従業員を一時的に子会社や関連会社に異動させることです。出向期間中、従業員は出向先の業務に従事しますが、出向元との雇用契約は継続します。出向元との雇用契約を解除し、出向先と雇用契約を締結するパターンもありますが、この場合は出向元に戻る予定は通常ありません。

出向の目的は、スキルの獲得や経験を積むことによるキャリアアップを促すためです。また、出向先企業の戦力強化を目的とする場合もあります。一方、左遷は元の役職や部署に戻る予定がありません。また、能力不足や適性の問題などを理由として行います。

3.左遷させる理由

左遷は、従業員にとっては罰則を与えられたようなものです。なぜ、左遷させるのか理由について詳しく見ていきましょう。

(1)能力や適性が現在の業務に見合っていない

左遷の主な理由は、仕事上のミスや能力不足です。ただし、一度の失敗で即座に左遷することはまれで、繰り返し同じミスを繰り返したり、企業の利益に多大な影響を及ぼす失敗をしたりした場合に行います。

従業員にとっては罰則のように感じるかもしれませんが、能力や適性に見合った配置転換を行うことは企業の責務です。結果的に従業員が能力を発揮できるようになり、企業の利益につながる可能性もあります。

(2)人間関係でトラブルを起こした

協調性が欠如しており、常に周囲との対立が絶えない場合、左遷を検討することがあります。成果を挙げていても、上司や同僚との衝突が頻発していると、組織全体にとって望ましくない結果を生むでしょう。

4.左遷の従業員への影響

左遷は、従業員にとって大きな問題であり、モチベーションの低下や退職リスクの増加などが起きる恐れがあります。左遷による従業員への影響について詳しく見ていきましょう。

(1)モチベーションの低下

従業員が望まない部署や職種への配置転換は、モチベーションの低下を招く要因です。従業員は自身の選択や意向に反して新しい部署に配置されるため、仕事のモチベーションが低下します。また、新しい状況に身を置くことに対する不安やストレスがモチベーションの低下を招きます。

通勤が難しくなる事業所への異動も、モチベーションの低下を引き起こす要因です。遠距離通勤によりストレスが増加し、生活に影響を及ぼします。ワークライフバランスが崩れることで労働に対する意欲が低下し、能力を十分に発揮できなくなります。

(2)退職リスクの増加

左遷に不満やストレスを感じる場合、退職リスクが高まります。特に、理不尽と捉えられるような不適切な配置転換は大きなストレスとなり、労働問題を引き起こすことになりかねません。また、左遷した従業員が他の従業員からの評判がよかった場合、反感を買う恐れもあります。その結果、企業にとって重要な人材が退職することも予想されます。

5.左遷させるときの注意点

左遷させるときは、法的な問題に発展しないように次の注意点を押さえましょう。

(1)雇用契約に違反しないようにする

従業員は正当な理由がある場合を除き、降格を伴う異動に従わなければなりません。しかし、不当な異動はパワハラとみなされる可能性があります。例えば、上司の個人的感情に基づく異動や、退職勧奨への応じない場合の不当な配置転換などが該当します。

労働基準法では、企業は従業員に対して労働条件を明示することが求められています。雇用契約書に記載された条件に反する異動が行われた場合、これは雇用契約に違反する可能性があります。

労働基準法には左遷について具体的に規定がないものの、過去に降格を伴う人事異動が違法と認められた判例も存在します。企業の評判にも関わるため、雇用契約に違反しないよう注意しましょう。

(2)賃金を下げるときは方法に注意する

左遷によって配置が換わると賃金が減額されることが一般的です。特に役職ありから役職なしへの降格は、賃金の大幅な減額を引き起こします。賃金の減額には契約上の根拠や就業規則の規定が必要です。

賃金体系が賃金規程で明示されている場合、その規程に従って賃金の減額が行われることは法的に適切です。しかし、賃金体系が明示されていない場合、左遷に伴う賃金減額は違法とされることがあります。

さらに、賃金の減少幅が過大である場合、違法とされる傾向があります。

6.左遷した場合の勤怠管理はどうする?

左遷は、従業員の役職や勤務場所が変更されることを指します。これに伴って、勤務時間、シフト、給与なども変更される可能性があります。新しい部署や役職での仕事に合わせて、勤怠管理しなければなりません。

多くの企業では、勤怠管理をエクセルやスプレッドシートなどで行っています。しかし、操作が煩雑であったり異動の際の設定変更などに手間がかかったりします。そこでおすすめなのが勤怠管理ツールです。

勤怠管理ツールは、出退勤の打刻や残業時間の集計、休暇の申請など、勤怠管理にまつわる機能を網羅しているため、管理の手間を大幅に削減できます。

7.まとめ

左遷は、能力不足や適性の問題、人間関係のトラブルを頻発させているなどの理由で、従業員を配置転換することです。待遇の悪化や環境の変化に伴い大きなストレスが生じるため、慎重に判断する必要があります。中には労働問題に発展したケースもあるため、違法行為に該当しない専門家に相談したうえで検討しましょう。