給与の算出を簡単にするために、勤怠や残業時間を「15分単位」で管理している会社は少なくありません。
しかし、的確に運用していなければ違法となる可能性があります。
この記事では、15分単位で業務時間を計算できるケースと、1分単位でなければいけないケースについて紹介します。
アルバイトやパートなど勤務形態ごとの管理の仕方も解説しますので参考にしてください。
1.勤怠管理の15分単位切り捨ては違法!
勤怠管理において、打刻時間を15分単位で切り捨てている企業は少なくありません。
しかし、「9時07分出勤を9時15分扱いにする」「18時08分退勤を18時00分扱いにする」といった運用は、内容によっては労働基準法違反に該当する可能性があります。
実際の労働時間より短く計算されれば、未払い残業代の発生や労働基準監督署からの指摘につながるおそれがあります。
まずは、なぜ15分単位の切り捨てが問題になるのか、法律上の考え方と企業が負うリスクについて確認していきましょう。
(1)15分や30分単位の切り捨てが違法となる根拠
原則として、15分単位、30分単位などで業務時間をまとめてしまうのは違法です。
根拠となるのは労働基準法第24条。
「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」と定められています。
例えば17:30が定時で、17:50まで働いた場合、15分単位での管理だと「17:45まで」の扱いとなり、5分間がなかったことになります。
これでは働いた分を全額を支払うことができません。
(2)労働時間は1分単位で計算する
労働基準法に則った運用のためには、労働時間は1分単位で管理・計算する必要があります。
1分単位で勤怠管理を行わなければ、労働の対価としての賃金が全額支給できません。
労働時間を切り捨てることで労働基準法違反となった判例や、労働組合による団体交渉で企業と争った事例はいくつも存在します。
また、労働基準法違反では30万円以下の罰金または6ヶ月以下の懲役が科されます。
従業員との信頼関係を保ち、企業のコンプライアンス遵守のためにも、労働時間は1分単位での管理を徹底すべきです。
(3)【補足】切り捨てが認められる場合もある
ここまで、労働時間を1分単位で管理する必要性を説明してきました。
しかしこれは、1日単位で計算する場合の話で、1ヶ月単位の場合は含まれません。
1ヶ月単位で時間外労働や休日労働を算出する場合は、1時間未満の端数をまるめる(切り捨てる)処理が認められています。
給与計算の手間を軽減するために設けられた仕組みです。
例えば1ヶ月の合計残業時間が7時間22分だった場合、「30分未満は端数」として処理をする場合は、残業時間を「7時間」として処理しても違法ではありません。
その逆で、例えば残業時間が7時間44分だった際に「30分以上は切り上げ」というルールで残業時間を「8時間」として計上することも可能です。
2.15分単位の勤怠管理で起こりうる問題
15分単位での勤務時間の切り捨てによって、労働時間分の賃金を全額支払わなかった場合に、法律違反としてさまざまな問題が起こり得ます。
ここでは代表的なものを3つ紹介します。
(1)労働基準監督署からの指摘
労働監督署では企業が労働環境を適切に管理しているか、実態を調査する権限を持っています。
調査は定期的に確認する「定期監督」と、労働災害発生後の「災害時監督」の他、従業員からの申告による「申告監督」、違反が見つかった場合に実施される「再監督」があります。
15分単位の勤怠管理は、労働基準監督署の調査で指摘される可能性があります。
是正勧告を受ければ、期日までに環境改善が求められます。
改善後は是正報告も必要です。
(2) 従業員からの未払い残業代請求
従業員には、未払いの賃金や残業代を請求する権利があります。
請求権の時効は3年です。
時効を過ぎれば支払う義務はありませんが、従業員との信頼関係が崩れる事態になりかねません。
また、請求した従業員以外との関係性も不安定なものになるでしょう。
企業と従業員の関係を良好なものにするためにも、法律は遵守すべきです。
(3) 企業の信用低下
賃金の未払いは従業員だけでなく社外からの信用も失いかねません。
投資家からは問題が発生した経緯や今後の対応について厳しく問われます。
取引先、一般市民、求職者からの印象も悪くなり、取引停止や従業員の離職、人手不足につながる可能性も。
近年はSNSや口コミサイトによって労務問題が拡散しやすい環境になっており、一度失った信頼の回復には多くの時間とコストを要します。
法令を守ることは、リスク管理の観点からも経営上の重要課題といえるでしょう。
3. 勤務形態ごとの残業時間
正しい残業時間の管理方法は勤務形態によって異なります。
パート・アルバイト、フレックスタイム制、裁量労働制など、働き方ごとの注意点をまとめました。
(1) パート・アルバイト
パートやアルバイトの時間外労働は、正社員と同じく割増賃金が加算されます。
割増賃金が発生するのは、1日8時間または週40時間を超えて労働した場合です。
例えば、通常1日5時間勤務のアルバイトが1日9時間働いた場合、8時間を超えた1時間分については25%以上の割増賃金の支払いが必要になります。
また、週に複数日勤務するパート・アルバイトを雇用する場合、1日8時間・週40時間を超える労働をさせるためには36協定の締結と届け出が必要です。
「正社員ではないから不要」という認識は誤りであり、勤務形態にかかわらず法定基準を超える場合は同様の手続きが求められます。
勤務時間の集計を1分単位で正確に行うことが、未払い賃金リスクを防ぐ第一歩です。
(2) フレックスタイム制
一定期間についてあらかじめ決められた総労働時間の中で、従業員が始業・終業時刻や労働時間を自ら決めることができる制度を「フレックスタイム制」といいます。
フレックスタイム制の場合、1日8時間・週40時間を超えても直ちに残業時間とはならないのが特徴です。
残業時間の計算は、総労働時間に対して実労働時間がどれだけ超過しているかで判断します。
あらかじめ労働すべき時間を定めた1カ月〜3カ月の「清算期間」があり、この期間において定めた時間が「総労働時間」となります。
総労働時間を超えて働いた分が残業時間とみなされ、割増賃金の支払い義務が生じます。
清算期間が複数月にまたがる場合は、月をまたいだ超過時間の管理が複雑になりがちです。
どの月にどれだけの残業が発生しているかを正確に把握するためにも、日々の労働時間を1分単位で記録しておくことが不可欠です。
(3) 裁量労働制
裁量労働制は、あらかじめ決められた時間を労働したとみなす勤務体系です。
求人では「勤務時間:裁量労働制(みなし労働時間8時間/日)」といった表現がされます。
朝8時出社や昼12時出社など、個人の裁量で毎日の始業・終業時刻を管理できるのがメリットです。
賃金は「みなし労働時間」に基づいて支払われ、通常の残業代はみなし労働時間に含まれます。
ただし、22時以降の深夜労働や法定休日の労働が発生した場合は、みなし労働時間とは別に割増賃金を支払う義務があります。
「裁量労働制だから残業代はすべて不要」という誤解は、深夜・休日労働が常態化している職場で特にトラブルになりやすい点です。
深夜帯の勤務実態を正確に記録し、別途割増賃金を計算できる体制を整えることが、法令遵守の観点から求められます。
4. 残業時間の正しい管理方法
残業時間は労働時間同様、1分単位で管理するのが基本です。
法定労働時間である1日8時間、週40時間を超えた労働には、1時間あたりの賃金を25%割増した「割増賃金」を労働時間数分支払わなければいけません。
正しい残業時間を算出するための基本知識を以下にまとめました。
(1)時間外労働と法内残業の違い
残業は、時間外労働と法内残業の2種類に分けられます。
| 時間外労働 | 法内残業 |
| ・法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えた場合の残業 ・1時間あたりの賃金×1.25で計算する | ・法定労働時間(原則1日8時間、1週40時間)を超えない場合の残業 ・賃金の割増は適用外 |
「時間外労働」は労働基準法第37条に基づく法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えた分の労働を指します。
一方「法内残業」は、企業の就業規則で定めた所定労働時間を超えているものの、法定労働時間の範囲内に収まっている残業のことです。
法内残業が発生しやすいのは、所定労働時間が法定より短く設定されているケースです。
例えば、所定労働時間が1日7時間の会社で8時間働いた場合、超過した1時間は法内残業となり、割増賃金は発生しません。
しかし、さらに働いて8時間を超えた分については時間外労働となり、25%以上の割増賃金が必要になります。
また、週3回・1日3時間勤務のアルバイトが1日4時間働いた場合も法内残業に該当します。
その日の給与は時給×4時間の通常賃金で計算します。
(2)深夜時間帯などの割増の種類
時間外労働以外にも深夜時間帯や法定休日労働などで「割増賃金」が発生します。
労働の種類と割増率は以下の通りです。
| 労働の種類 | 定義 | 割増率 |
| 法内残業 | ・1日8時間、週40時間以内 ・1日の所定労働時間が7時間以下 (アルバイトなど) | 0% |
| 時間外労働 (法定外残業) | 1日8時間、週40時間を超える労働 | 25% |
| 1ヶ月60時間以上 | 月60時間を超える時間外労働 | 50% |
| 法定休日労働 | 法定休日での労働 | 35% |
| 深夜労働 | 22時~5時の労働時間 | 25% |
特に注意したいのが深夜時間帯(22時〜5時)の時間外労働の場合です。
割増賃金の計算方法は「1時間あたりの賃金×1.5(時間外労働1.25+深夜労働0.25)×時間数」です。
この場合、割増賃金の計算式は「1時間あたりの賃金×1.5(時間外労働1.25+深夜労働0.25)×時間数」となり、合計50%の割増が必要です。
例えば、1時間あたりの賃金2,000円のスタッフが、18時から24時まで時間外労働をした場合、
18時〜22時(4時間)までの残業代は
2,000円×1.25×4時間=10,000円
22時〜24時(2時間)までの残業代は
2,000円×1.5×2時間=6,000円
と計算できます。
深夜帯を含む残業が常態化している職場では、計算ミスが未払いにつながりやすいもの。
システムによる自動計算の導入が特に有効です。
5. 正しい勤怠管理にはシステムが有効な理由
15分単位の切り捨ては労働基準法違反となり、監督署からの指摘や未払い残業代請求、企業の信用低下といったリスクを招きます。
法令に則った正確な管理を実現するうえで、クラウド型の勤怠管理システムの導入が有効です。
(1) 労働時間を1分単位で自動集計できる
クラウド型の勤怠管理システムでは、スタッフの打刻データをもとに労働時間・残業時間を1分単位で自動計算します。
Excelへの手入力では、担当者が意図せず端数を丸めてしまうケースや、集計ミスが生じるケースが避けられません。
システムを導入することで、そうした人的ミスによる切り捨てリスクをゼロに近づけられます。
深夜割増や休日労働の割増計算も自動で処理されるため、複雑な計算式を担当者が個別に管理する必要もなくなります。
(2) 多様な勤務形態を一元管理できる
通常のシフト勤務に加え、フレックスタイム制・裁量労働制など複数の勤務体系が混在する職場でも、クラウド型システムであれば一元管理が可能です。
勤務形態ごとに異なる残業計算ルールが自動で適用されるため、担当者が制度ごとに計算方法を切り替える手間がかかりません。
パート・アルバイトの週次労働時間の累計管理や、フレックス制の清算期間ごとの超過時間把握なども、システム上でリアルタイムに確認できます。
(3) 法改正にも迅速に対応できる
労働基準法や割増賃金率の改定など、労働関連法令は定期的に見直されます。
クラウド型システムであれば、法改正への対応がアップデートとして自動反映されるため、担当者が法令の変更内容を調べて計算ルールを手修正する必要がありません。
働き方改革関連法の施行以降、労務管理に求められる基準は年々厳しくなっています。
常に最新の法令に準拠した状態で運用を続けられることは、クラウド型システムならではの大きなメリットといえます。
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