労働基準法には、休憩時間に関する規定も含まれています。
企業側は、従業員の労働時間の長さに応じて、45分以上や60分以上の休憩を与えなければなりません。
休憩時間は、労働者の疲労回復やストレス軽減に役立ちますが、その与え方にも法律が定める原則があります。
この記事では、休憩時間の定義、規定、三原則など、人事労務担当者が知っておくべき事項を詳しく解説します。
1.労働基準法上の休憩時間の定義
休憩時間とは、業務から完全に解放されている時間のことです。
昼休み中に電話や来客対応をする場合は、本来NG。
休憩時間中に業務に関する指示を与えるのもふさわしくありません。
また、休憩時間は、労働時間の途中に与える必要があります。。
そのため、9時〜17時の勤務で休憩を16時〜17時に設定することはできません。
2.休憩時間の与え方(6時間・8時間ルール)
休憩時間の与え方は、労働時間に応じて決まります。
具体的には、以下のようなルールがあります。
- 労働時間が6時間以内なら休憩時間は与えなくてもよい
- 労働時間が6時間超8時間以内なら45分以上の休憩時間を与える
- 労働時間が8時間超なら60分以上の休憩時間を与える
このルールは、正社員やパート、アルバイトなど、雇用形態に関係なく適用されます。
もちろん、上記よりも多く休憩を設定することは問題ありません。
労働時間6時間以内であっても、生産性を高めるために途中で30分の休憩を挟む、労働時間7時間30分でお昼休み1時間の休憩を与える、など、基準以上の休憩時間を設ける企業も多くあります。
3.休憩時間の与え方に関する3つの原則
休憩時間の長さだけでなく、与え方についても、以下のような三原則があります。
- 途中付与の原則:休憩時間は労働時間の途中に与える
- 一斉付与の原則:休憩時間は事業場単位で一斉に与える
- 自由利用の原則:休憩時間は従業員に自由に利用させる
以下、詳しく説明します。
(1)途中付与の原則
休憩時間を労働時間の前後に与えることを禁止する原則です。
休憩時間は労働者の疲労回復を目的としており、労働時間の途中に与えることで、労働者の健康維持に繋がります。
労働者が「休憩時間は不要です」と申し出たとしても、休憩を与えないことは違法になるためご注意ください。
(2)一斉付与の原則
休憩時間を事業場単位で一斉に与えることを求める原則です。
休憩時間は、労働者の交流やコミュニケーションのためにも重要なものであり、一斉に与えることで、労働者のモチベーションやチームワークを高めることができます。
ただし労使間で労使協定を結んでいる場合や、業務の性質によって一斉に与えることが困難な場合、休憩時間を分散して与えることもできます。
一斉休憩が困難な業種については、法令で一斉休憩の適用が除外されています。
具体的には、以下の業種が該当します。
運輸交通業(旅客業、運送業など)
商業(小売業、卸売業、理美容業など)
金融保険業(銀行、証券、保険など)
興行の事業(映画制作、映画館、演劇業など)
通信業(郵便業、電話、インターネットなど)
保健衛生業(病院、診療所、薬局など)
接客娯楽業(旅館、飲食店、娯楽場など)
官公署の事業(国、地方公共団体、独立行政法人など)
これらの業種では、一斉休憩をするとお客様や利用者に不便や不利益を与える可能性が高いため、休憩時間を個別に設定できます。
(3)自由利用の原則
休憩時間は従業員に自由に利用させることを求める原則です。
休憩時間は、労働者の自己決定の権利の一つであり、休憩時間中に業務を命じたり、制限したりすることはできません。
ただし、休憩時間中に事業場を離れる場合は、事前に申し出るなどの配慮が必要です。
また、外出する場合は制服から私服に着替える、などの規律も認められています。
4.休憩時間を正しく付与しなかった場合のリスク
休憩時間を正しく与えなかった場合に考えられるリスクとして、次のようなものがあります。
(1)給料や残業代請求などのトラブル
休憩時間は労働時間から差し引かれるものとして扱われます。
休憩時間なのに業務を課したり、休憩時間を自由に利用させなかったりした場合、その時間は労働時間とみなされます。
この場合、労働者は通常の賃金や残業代を請求可能です。
労使間トラブルにならないよう、休憩時間と労働時間でメリハリのある仕事環境を整備しましょう。
(2)法律違反となるリスク
労働基準法において、休憩時間を適切に付与しないことは違法です。
違反があった場合、労働基準監督署から企業に対して是正勧告が出されます。
悪質な場合には刑事罰(6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金)の対象となるため、適切な管理を行いましょう。
(3)労働災害の発生リスク
休憩を取らずに働き続けると、集中力や作業効率が低下し、事故やトラブルなどの労働災害が起こるリスクが高まります。
労働災害が発生した場合、労災保険による給付だけで企業の損害賠償責任を免れるわけではありません。
労災保険でカバーできない損害は自社で損害賠償責任を負うことになります。
(4)従業員の離職や不満につながる
充分な休憩時は、労働者の健康や生産性向上だけでなく、モチベーションや満足度を高めることにもつながります。
逆に、休憩時間を取れない状況が続くと、労働者はストレスや不満を感じ、離職・退職の可能性が高まります。
これは、会社にとっても人材流出や雇用コスト増加などの損失でしかありません。
従業員定着のためにも、休憩時間は適切に設定しましょう。
5.休憩時間についてのよくある疑問とその答え
Q1: 労働時間が6時間ちょうどの場合、休憩時間は?
A: 6時間ちょうどであれば与えなくても問題ありません。
労働基準法では、労働時間が6時間を超える場合にのみ休憩時間の付与義務があります。
ただし、労働者の健康や生産性を考慮して、6時間以下の労働でも休憩時間を設けることはできます。
ちなみに「8時間ちょうど」の場合は「6時間超〜8時間以内」に当てはまるので、休憩は45分で問題ありません。
1時間以上の休憩を与える必要があるのは「8時間を超えた場合」です。
Q2: 休憩時間中の電話対応は?
A: 休憩中の電話やメール対応は労働にあたります。
休憩時間中は労働から離れることが保障されており、業務を強いるのは労働基準法違反です。
休憩中に業務を行った場合は、その時間は労働時間に含まれ、会社は別途休憩を与えなければなりません。
Q3: 45分休憩を15分と30分に分けるのはOK?
A: 分けてもOK。
例えば、8時間超の労働の場合、30分の休憩を2回に分けて与えることも可能です。
ただし、労働者が十分に休息を取ることができるよう、適切に設定するべきです。
Q4:残業で労働時間が8時間を超えた場合の休憩時間は?
A:労働時間が6時間超〜8時間未満で、残業によって8時間以上になった場合、それまでにとっていた45分の休憩の他に、15分以上の休憩を与える必要があります。
すでに1時間の休憩を取っていた場合は、休憩時間を追加で設ける必要はありません。
Q5:休憩に入る時もタイムカードの打刻は必要?
A:タイムカードで出退勤を管理している場合、休憩時間にタイムカードを押す必要はありません。
労働基準法では、労働日や始業時間、終業時間の記録が求められていますが、休憩時間の記録は必須ではありません。
休憩時間は労働時間から自動的に差し引かれるものとして扱われます。
ただし、休憩時間が固定されていない場合や時給制の場合、休憩時間の記録はあるのがベターです。
休憩時間が正しく記録されていないと、労働時間や給与の計算に影響が出る可能性があります。
会社の規則や労使協定に従って、休憩時間の打刻を行うかどうかを確認しましょう。
Q6:アルバイトや契約社員など、雇用形態で休憩時間のルールは別?
A:休憩時間の付与ルールは全ての雇用形態で共通です。
正社員・契約社員・派遣社員・アルバイトやパートなどの立場に関係なく、全員が対象となります。
一方、業務委託や請負などの契約形態については、雇用契約は結んでいないため、休憩付与の対象とはなりません。
ただし、業務委託でも他の従業員と同様に指揮命令を受けて働く場合は従業員とみなされ、休憩時間を設ける必要があるためご注意ください。
Q7:当直や宿直業務の「仮眠」は休憩時間に当てはまる?
A:仮眠時間が休憩時間に当てはまるかどうかは、仮眠中に労働者が使用者の指揮命令下に置かれているかどうかによって判断されます。
仮眠中に緊急事態で起こされて業務に従事する場合や、仮眠中に使用者から連絡が入る可能性がある場合などは、仮眠時間も労働時間として扱われ、賃金が発生します。
仮眠中でも他の従業員が業務に対応するために労働者が起こされることがない場合や、仮眠中に使用者からの連絡がない場合は労働時間とはみなされません。
6.正しい休憩時間の付与には勤怠管理システムを活用しよう
労働基準法における休憩時間は、労働者の健康と生産性を保護するために重要なものです。しかし、休憩時間の設定や管理には、様々なルールや例外があります。そのため、休憩時間を正しく遵守することは、労務管理において難しい課題の一つです。
休憩時間を正しく設定するなら、勤怠管理システムを使うことをおすすめします。
勤怠管理システムは、労働時間や休憩時間を自動的に計測し、労働基準法に沿った休憩時間の付与や通知を行います。
また、休憩時間の分割や一斉付与の原則など、労使協定に基づく休憩時間の変更も可能です。
さらに、休憩時間の実績や傾向を分析し、労働者の健康や生産性の向上に役立つレポートを作成できます。勤怠管理システムを使えば、休憩時間の設定や管理が簡単になります。
休憩時間を十分に取ることができれば、労働者の満足度向上に貢献できるでしょう。
休憩時間を正しく設定するためにも、ぜひ勤怠管理システムをお試しください。
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