欠勤控除は、従業員が労働しなかった分の給与を減額する制度です。
この記事では、企業が欠勤控除を適用する上での基本や欠勤控除の目的、計算方法についてまとめました。
具体的な計算方法も紹介しています。ぜひ参考にしてください。
1. 欠勤控除の基本
(1)欠勤控除とは
欠勤控除は、従業員が勤務しなかった日数に応じて給与から差し引かれる制度です。
似た制度で、働かなかった時間数(遅刻・早退した時間数)に応じて給与から差し引かれる「遅刻早退控除」もあります。
(2)欠勤控除の目的
欠勤控除は「ノーワーク・ノーペイの原則(従業員が実際に労働を行った時間や日数に応じてのみ給与を支払うという考え方)」に基づいた制度です。
給与は労働を提供した対価として支払われるものであり、労働しなかった分は当然支払われません。
企業の運営において、無駄な欠勤を防ぎ、生産性を維持するために存在する制度です。
(3)欠勤・休暇・休職・休業のちがい
欠勤控除を知る上で、休暇や休職とのちがいも理解しておきましょう。
以下にちがいをまとめました。
- 欠勤…労働義務のある日に1日休むこと。給料は支払われない。
- 休暇(有給休暇)…給料を支払われながら取得できる休み。労働者の権利として労働基準法第39条で定められている。
- 休職…雇用契約を維持したまま労働義務を免除されること。病気やケガ、留学など。会社側に給与の支払い義務はないが、労働契約で給与のルールが定められている場合もある。
- 休業…会社都合の業務停止(経営難や自然災害)、育児休業、介護休業など、特別な事情によって業務免除を命じられた上で取得できる休暇。会社側の理由による休業の場合は平均賃金の6割以上を支払う必要がある。
2. 欠勤控除の適用範囲
欠勤控除は、以下のケースで適用されます。
(1)休暇を取得しなかった場合:
年次有給休暇を取得せずに欠勤した場合、欠勤日数に応じて給与から差し引かれます。
例えば年次有給休暇を使い切った後にケガや病気で休むことになった場合は欠勤扱いです。
また、会社によっては慶弔休暇やリフレッシュ休暇、アニバーサリー休暇などの制度を設けている場合があるかと思います。
これらを利用せずに仕事を休んだ場合も、欠勤になります。
(2)欠勤控除にならないケース
経営難や機械の故障、自然災害により会社都合で休業する場合、欠勤控除は適用させません。
会社都合の休業では、従業員に所定の休業手当を支払うことが義務付けられています。
3. 欠勤控除額の計算方法
欠勤控除額は、従業員の雇用形態や給与体系によって異なります。
また、企業の就業規則や労働契約によっては以下にあてはまらないケースもあるためご注意ください。
基本的な計算方法を以下で紹介します。
(1)月給から日数分の欠勤控除を計算する方法
月給を所定労働日数で割った金額分だけ、欠勤日数に応じて給与から差し引かれます。
(例)月給40万円で、1ヶ月の所定労働日数が20日、欠勤日数が3日あった場合
40万円÷20日×3日(欠勤日数)=6万円
6万円が欠勤控除としてその月の給与から差し引かれます。
(2)遅刻や早退時の計算(遅刻早退控除)
遅刻や早退した場合も、同様に日割り計算で差し引かれます。
これを遅刻早退控除といいます。
計算式は
「月の給与額」÷「ひと月当たりの平均所定労働時間」×「 遅刻・早退した時間」
となります。
(例)月給40万円で1ヶ月の所定労働時間数160時間、遅刻・早退が10時間分あった場合
40万円÷160時間×10時間(遅刻早退)=2万5千円
2万5千円が遅刻早退控除としてその月の給与から差し引かれます。
4. 欠勤控除の注意点
欠勤控除には以下の注意点があります。
(1)最低賃金を下回らないようにする
欠勤控除を適用する際、最低賃金を下回らないように設定しましょう。
特に、「1ヶ月間のうち数日出勤して、残りは欠勤」の場合、所定労働日数が多い月で計算すると時給換算で最低賃金より低くなる可能性があります。
この場合は欠勤日数分を差し引くのではなく、「1日あたりの給与額×出勤日数」を支給しましょう。
給与規程に明記することをおすすめします。
(2)残業時間との相殺はできない
遅刻早退控除の場合、残業時間との相殺ができるのではと考える方もいるかもしれません。
しかし、残業には割増賃金を支払う必要があるため、欠勤控除と残業代の相殺はできません。
(3)控除ルールは就業規則に明記しておく
欠勤控除や遅刻早退控除の詳細なルールや計算方法は、労働基準法では定められていません。
そのため、各社が就業規則に明確に記載し、従業員に周知しましょう。
厚生労働省のモデル就業規則 を参考にするのがおすすめです。
(4)法律遵守と公正な運用
欠勤控除を行う際は常に労働基準法その他の関連法規を遵守し、公正かつ透明性のある運用を心がけることが必要です。
企業による不当な控除は、労働問題を引き起こす原因となり得るため、法令遵守と公正な判断が求められます。
おわりに
欠勤控除の具体的な適用は、労働契約や企業の就業規則、そして国の労働法に大きく依存します。
また、適用する際は従業員への適切な説明と合意、法令の遵守が重要です。
特に、病気や怪我などのやむを得ない理由での欠勤に対しては、企業によっては柔軟な対応を取る場合もあります。
従業員にとって不利益となる措置を適用する際は、その合法性と公平性を慎重に検討する必要があります。
正しい知識と理解に基づいた運用を心がけましょう。
人気記事