安心して働き続けるためには社会保険の加入が不可欠です。
しかし、具体的な加入条件や手続き方法、必要書類については理解しづらくなっています。この記事では、社会保険制度の基本をわかりやすく解説し、スムーズに社会保険を利用するための情報を提供します。
1.社会保険とは
社会保険とは、「健康保険」「厚生年金保険」「雇用保険」「労災保険」「介護保険」をまとめて指す言葉です。
社会保険の加入は、将来に備え、安心して働き続けるために重要な役割を果たします。
企業側は「健康保険」「厚生年金保険」「雇用保険」「労災保険」に加入することが義務付けられています。
(1)健康保険
病気やケガで医療機関を受診した場合に、一定額の負担で済む制度です。
また、傷病手当金や出産手当金などの給付もあります。
会社員は組合健保か協会けんぽに加入し、自営業者や学生などは国民健康保険に加入します。
(2)厚生年金保険
老齢や障害、死亡などの場合に、一定額の年金を受け取る制度です。
国民年金に加えて、会社員は厚生年金にも加入します。
年金の額は、加入期間や給与額に応じて変わり、将来的に国民年金に上乗せする形で支給されます。
法人の場合は従業員がいなくても(社長一人だけで仕事をしていても)加入する義務があります。
(3)雇用保険
失業や育児・介護休業などの場合に、一定期間の給付金を受けられる制度です。
また、再就職やキャリアアップのための支援も受けられます。
雇用保険は、労働者と事業主の双方が保険料を支払います。
(4)労災保険
労働災害の事故やケガに備えるための保険です。
通勤途中の業務中のケガや病気、障害、死亡に対して、被保険者や遺族へ給付されます。
一人でも労働者を使用する事業(つまり個人事業主以外)は、業種や規模を問わず適用されます。
他の3つの社会保険が労働者と企業双方で保険料を負担するのに対して、労災保険は企業が全額負担します。
(5)介護保険
介護や支援が必要な方に、かかる費用の一部を給付する制度です。
健康保険加入者のうち40歳以上が加入する保険です。
会社員の場合は保険料の半分を会社が負担します。
2.従業員の社会保険の加入条件
社会保険に加入するための条件は、各制度によって異なります。
以下、1つずつ詳しく紹介します。
(1)労災保険はすべての労働者が対象
労災保険には「被保険者」の概念がなく、従業員は全員加入します。
正社員だけでなくアルバイトやパートなどすべての労働者が対象です。
保険料は前年度の賃金総額に、業種ごとさだめられた保険率を掛けて求められます。
(2)2024年10月から適用範囲が拡大
2024年10月から、社会保険(健康保険。厚生年金保険)の適用範囲が拡大し、従業員51名以上の企業が対象になります。
これまで社会保険の加入が義務付けられていなかったアルバイトやパートの従業員も、勤務時間がフルタイムの3/4以上であれば加入対象です。
この変更により、健康保険や厚生年金保険の保護を受けることができる労働者が増加することになります。
企業側の社会保険料の計算や、従業員個人の年金額・保険料のシミュレーションなどは厚生労働省の特設サイトで確認可能です。
(3)事業所(企業)の社会保険への加入条件
事業所が社会保険に加入するためには、一定の条件が必要です。
主に従業員数や業種が加入条件に影響します。
なお、社会保険はアルバイトやパートを含む全従業員を対象にした保険加入が基本ですが、学生アルバイトや、賃金が月額8.8万円未満、週の掌底労働時間が20時間未満の場合などは対象外です。
社会保険の中でも健康保険と厚生年金保険については「強制適用事業所」と「任意適用事業所」があります。
以下が厚生労働省のホームページで公開されている、業種ごとの適用範囲です。
黒字で書かれている業種が「強制適用事業所」と考えてください。
なお、こちらは2019年時点で作成された表です。
士業は非適用となっていますが、2022年10月の改正以降適用業種となっていることに注意しましょう。
出典:https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000565930.pdf
①強制適用事業所
強制適用事業所とは、社会保険の加入が義務付けられている事業所を指します。
すべての法人事業所(従業員1名以上)および個人事業所(常に従業員を5名以上雇用している)は強制適用事業所に該当します。
強制適用事業所では、給与を支払っている従業員・役員が1名でもいれば、社会保険への加入手続きが必要です。
②任意適用事業所
強制適用事業所に該当しない事業所で、一定の条件を満たせば任意加入が可能です。
任意適用事業所に該当するのは、従業員が5名未満の個人事業所および非適用業種(農業・林業・水産業、サービス・自由業、宗教など)です。
3.社会保険に加入する場合の手続き
(1)事業所が新規加入する際の手続き
事業所が社会保険(健康保険・厚生年金保険)に新規加入する際は、最寄りの社会保険事務所で手続きをします。
必要書類は「健康保険・厚生年金保険 新規適用届」の他にいくつかあるため、年金事務所公式サイトを確認しましょう。
なお、これまでは「従業員101人以上」が加入条件でしたが、2024年10月以降は「従業員51人以上」へ変更となります。
未加入のままだと罰則が科せられる可能性もあるためご注意ください。
(2)従業員が社会保険へ加入する際の手続き
従業員が社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入する際には、一定の加入条件を満たす必要があります。
・75歳未満の正社員や代表者、役員であること
・70歳未満で週の所定労働時間および1ヶ月の所定労働日数が、常時雇用者の4分の3以上の人(例:週5日8時間労働の職場なら週30時間以上)
・以下のすべてに該当する短時間労働者(パートやアルバイト)
・従業員101人以上の事業所に勤務している
※2024年10月からは従業員数51人以上
・週の所定労働時間が20時間以上
・2ヶ月を超える雇用見込がある(フルタイムと同様)
・学生ではない(夜間学生、通信制は除く)
・月額の賃金が8.8万円を超える
おわりに
社会保険は、健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険、介護保険の5つの制度からなり、働く人の生活を支える重要な制度です。加入する条件は事業所や従業員の条件によって異なります。
病気やケガ、失業、退職後の生活に備えて、賢く活用しましょう。
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