長時間労働は、現代社会の深刻な課題の一つです。
労働者の健康や生産性に悪影響を及ぼすだけでなく、企業の成長と持続可能性にも大きなマイナスとなります。
本記事では、なぜ長時間労働が発生するのか原因を把握した上で、具体的な対策と企業の成功事例を紹介します。
企業がどのようにして労働環境を改善し、持続可能な成長を実現するのかご理解いただければ幸いです。
長時間労働はなぜ起こる？
そもそも、長時間労働はなぜ発生しているのでしょうか。
具体的な原因としては以下の7つが挙げられます。
- 過剰な仕事量
- 企業文化や慣習
- 労働力不足
- 管理職や上司の期待
- 業績評価や昇進のプレッシャー
- IT化やDXが不十分
それぞれ、詳しく見ていきましょう。
過剰な仕事量
労働者に対して与えられる仕事の量が、標準的な労働時間内に完了できないほど多い場合、長時間労働が避けられなくなります。
急なプロジェクトの追加や、計画外の仕事、顧客対応などによって、就業時間外の業務を強いられるのも一因です。
企業文化や慣習
企業の文化や歴史的な慣習が長時間労働を容認または奨励する場合、従業員はその文化に適応するために長時間働くことが求められることがあります。
日本では「サービス残業」と呼ばれる無給の残業が以前から存在していました。
これをなくすには、サービス残業に対する法規制の強化や、サービス残業が許されない企業風土などが求められます。
労働力不足
特定の産業や企業において労働力が不足している場合、既存の従業員に過剰な負担がかかり、結果として長時間労働が発生します。
特に人手不足が深刻なのが、運送業界や医療・福祉業界、建設業界です。
管理職や上司の期待
管理職や上司が長時間労働を期待する、または奨励する場合、従業員はその期待に応えるために長時間働くことがあります。
上司が自ら長時間労働を行っている場合、部下も帰りづらく、結果的に職場全体で長時間労働が蔓延することに。
マネジメントする側の意識改革が急務です。
業績評価や昇進のプレッシャー
業績評価や昇進のために成果を上げる必要があると感じる従業員は、評価を高めるために長時間働くことがあります。
特に成果主義の企業では、このプレッシャーが強くなります。
IT化やDXが不十分
業務プロセスやツールが効率的でない場合、作業時間が延びてしまいます。
古いシステムや手作業に頼る業務が多い場合、効率的に仕事を進めることが困難です。
マンパワーに頼った結果、長時間労働が発生します。
長時間労働が企業にもたらす5つの悪影響
長時間労働は、スタッフ個人や企業に悪影響をもたらします。
主なものを5つまとめました。
- 生産性の低下
- 従業員の健康問題の増加
- 離職率上昇
- 企業イメージの悪化
- 法的リスクの増加
それぞれ、詳しく解説します。
生産性の低下
長時間労働が続くと、従業員は疲労が蓄積し、集中力や注意力が低下します。
ミスやエラーが増え、仕事の質も下がることに。
また、疲れがたまりやすくなるため、効率的に仕事をこなすことが難しくなります。
結果として、企業全体の生産性が低下し、事業内容や売上に悪影響を及ぼします。
従業員の健康問題の増加
長時間労働は従業員の肉体的および精神的な健康に深刻な影響を与えます。
過労やストレスからくる心身の不調が増加し、病気やけがのリスクが高まります。特に、心臓病や高血圧、うつ病などの健康問題は深刻です。
長期的に従業員の生活の質を大きく損ない、医療費や休職によるコストも増加します。
離職率上昇
長時間労働が常態化すると、従業員のモチベーションや職場満足度が低下し、離職率が上昇します。
人材が定着しないことで、新たにスタッフを採用するためのコストや、研修などの対応も必要です。
熟練した従業員が離職することで、企業のノウハウや技術が失われ、生産性の低下、競争力の低下を招きます。
企業イメージの悪化
長時間労働が問題視される企業は、労働環境が悪いというイメージが定着します。
イメージの悪化は優秀な人材の採用が難しくなり、また消費者からの信頼低下も避けられません。
企業の社会的責任（CSR）を重視する現代において、労働環境の改善は企業のブランド価値に直結する重要な要素です。
法的リスクの増加
長時間労働は労働基準法違反となる可能性があり、企業は法的リスクを抱えることになります。
労働監督署の監査や労働争議の対象として、罰金や賠償金の支払いを迫られることも。
法的問題が公になることで、企業の信用や評判に悪影響を及ぼし、長期的な経営リスクとなります。
長時間労働の防止に有効！企業ができる4つの対策
長時間労働が常態化している企業は、一刻も早く対策する必要があります。
ここからは、長時間労働を防止するために有効な方法を4つ紹介します。
- 労働時間の適正管理
- ワークライフバランスの推進
- 業務効率の向上
- メンタルヘルスのサポート
それぞれ詳しく見ていきましょう。
労働時間の適正管理
企業は従業員の労働時間を適正に管理するためのシステムを導入することが重要です。
パソコンやスマートフォンで使える勤怠管理システムを活用すれば、実働時間を正確に把握できます。
勤怠管理システムの導入によって、過度な残業を防止し、法定労働時間を遵守できます。
また、定期的な労働時間の見直しも有効です。
労働時間が長くなりがちな部門やプロジェクトを特定し、適切な対策を講じることが求められます。
管理職を対象とした研修も欠かせません。
適正な労働時間管理の重要性を教育し、全社的な取り組みとして労働時間の管理を徹底しましょう。
ワークライフバランスの推進
企業は従業員が仕事と生活のバランスを取れるように支援することが求められます。
具体的には、フレックスタイム制度やリモートワーク導入、育児や介護でも融通が効きやすい勤務制度の提供などです。
また、休暇取得の推奨や有給休暇の計画的な取得奨励によって、従業員がリフレッシュし、心身の健康を保つことができます。
これらの施策により、従業員のモチベーションと生産性が向上し、長時間労働防止につながります。
業務効率の向上
業務効率を向上させるために、企業は業務プロセスの見直しや自動化を進めることが重要です。
具体的には、定期的な業務フローの分析を行い、無駄な手順や重複業務を排除します。
最新のITツールやソフトウェアを活用し、ルーチン作業を自動化することも従業員の負担軽減に役立ちます。
業務効率化に向けた研修やトレーニングを実施し、従業員のスキルアップを図るのも効果的です。
効率的な業務遂行は、短時間で高い成果を上げることにつながり、長時間労働の削減に寄与します。
メンタルヘルスのサポート
従業員のメンタルヘルスをサポートするために、カウンセリングサービスやメンタルヘルスに関する教育プログラムを提供する企業も増えています。。
具体的には、従業員が気軽に相談できる社内カウンセラーや外部の専門機関との提携を進めます。
定期的なメンタルヘルスチェックやストレス管理に関するワークショップの開催も、メンタル面のサポートには有効です。
管理職にはメンタルヘルスの重要性を理解させ、早期発見と適切な対応を促す教育を行いましょう。
従業員が健全な精神状態で働ける環境を整え、長時間労働の予防に役立ちます。
長時間労働の対策事例3選
国内でも、長時間労働の削減に力を入れている企業が多くあります。
ここでは、代表的な事例について3つ、詳しく説明します。
株式会社クラシコム
ECサイト「北欧・暮らしの道具店」で北欧インテリア・雑貨を扱うクラシコムは、18時退社を徹底しています。
社員に無理を強いるような仕事を断る、過度な労働を防ぐ、ワークライフバランスを重視する社内文化を醸成する、残業時間を可視化する、などの方法で、残業を減らす意識を高めて来ました。
18時退社徹底後も、業績は160%アップ。
支障なく事業を伸ばしていることがわかります。
株式会社ピコナ
3DCGアニメをメインに制作する株式会社ピコナ。
アニメ業界は長時間労働が常態化しており、ピコナも例に漏れず、以前は月100時間残業が当たり前でした。
代表がアメリカのアニメーション制作現場を視察した際、クリエイターが余暇の時間を大切にする光景に衝撃を受け、残業チケットを導入。
使用可能回数を月7枚までと制限したことで、時間外労働を80%削減できました。
トヨタ自動車株式会社
トヨタ自動車では、従業員の仕事と育児・介護との両立を含めた「柔軟な働き方への変革」を通じて、生産性高く、能力を最大発揮できる職場を実現しています。
以下、取り組みの一部を紹介します。
①在宅勤務制度の新設
テレワークとしてFTL制度（Free Time and Location）を構築。
在宅勤務の場所は原則自宅で、勤務の開始・終了時は上司にメールで通知。
深夜勤務は月10時間以下を目安とし、週1回2時間の在社を義務化しました。
②年次有給休暇取得促進
3Days Vacation（年1回以上の3連休での取得）を推奨。
最大60日まで保有可能な有給休暇制度を導入しています。
おわりに
長時間労働の防止は、従業員の健康と企業の成長を守るために不可欠です。
この記事で紹介した対策や成功事例を参考に、自社の労働環境を見直し、適切な改善策を実施することが求められます。
労働時間の適正管理やワークライフバランスの推進、業務効率の向上、メンタルヘルスのサポートなど、複合的なアプローチが重要です。
また、勤怠管理システムを活用した勤務時間のマネジメントも効果的です。
これらの取り組みを通じて、企業と従業員の双方が共に成長できる未来を目指しましょう。
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