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労働生産性の定義とは?業務効率化との違いや計算方法・労働生産性を上げるヒント

労働生産性の定義とは? 未分類

「労働生産性」は、企業や経済全体の効率と競争力を評価するための重要な指標です。
この指標を理解することは、効率的な業務改善や組織の生産性向上策を検討するヒントとなります。
本文では、「物的労働生産性」と「付加価値労働生産性」について詳しく説明し、それらがどのように企業や産業の特性に適応しているかを紹介します。
労働生産性を向上させるヒントも後半で解説しますので、ぜひお読みください。

1.労働生産性には2種類ある!

労働生産性には、「物的労働生産性」と「付加価値労働生産性」という二つの異なる計測方法があります。
二つの生産性の計測方法は、それぞれが持つ特性に基づいて選ばれます。
企業や産業の特性に適した方法で生産性の改善を目指すことが重要です。
それぞれの概念について詳しく説明します。

(1)物的労働生産性とは

物的労働生産性は、労働時間あたりの生産量(物量)を示します。
これは、生産される製品やサービスの数量を、それを生産するのに必要な労働時間で割ったものです。
具体的には、ある期間に生産された製品の数や完成したサービスの件数を、その期間中に働いた総労働時間で割って計算します。
この方法は、特に製造業や建設業など、物理的な製品を生産する産業において適しており、生産効率を測定するための指標として用いられます。
物的労働生産性を向上させるには、同じ労働時間でより多くの製品を生産するか、同じ量の製品をより少ない労働時間で生産することが必要です。

(2)付加価値労働生産性とは

付加価値労働生産性は、労働時間あたりにどれだけの経済的価値(付加価値)を生み出しているかを示します。
これは、企業や組織が生み出す付加価値を総労働時間で割ったものです。
付加価値は、売上から中間投入費(原材料費、エネルギー費など直接的な生産コスト)を差し引いた額であり、企業が実際に新たに創出した経済価値を表します。
この指標は、サービス業を含む様々な業種で用いられ、単に量だけでなく、価値創出の効率を評価するための重要な基準となっています。
付加価値労働生産性を高めるためには、高付加価値製品やサービスの提供、プロセスの効率化、または革新的な方法で市場ニーズに応えることが重要です。

2.労働生産性と業務効率化のちがい

労働生産性と似た用語に【業務効率化】があります。

どちらも仕事の成果を出す上で重要な要素ですが、具体的にどう異なるのかをまとめたのが以下の表です。

労働生産性業務効率化
定義労働投入量(時間や人数)に対する出力(量や価値)の比率を測定する指標定の業務プロセスや日常的な作業の効率を改善するための措置や方法
目的組織全体において同じ労働投入でどれだけ多くの成果が得られるかを評価   業務や作業をより速く、より少ない資源で完成させ、コストや時間削減を実現
使用場面  経済学や経営学で使用され、産業全体や国全体の生産効率を測定企業の内部プロセス改善、作業の自動化など、作業レベルでの改善が対象   
重要性組織の競争力や経済全体の成長に直結日々の作業を改善し、組織の成果向上に直結

労働生産性は、より広範な経済的な視点から労働の効率を考えるのに対して、業務効率化は具体的な作業やプロセスの改善に焦点を当てるという点で異なります。

労働生産性は業界や国家単位で、業務効率化は企業や組織単位で使われる言葉と考えるのがシンプルです。
どちらも成果と効率を向上させるために重要である点は共通しています。

3.労働生産性の計算方法

従業員の労働効率や生産効率を数値化する指標である労働生産性ですが、。二つの種類はそれぞれ計算方法が異なります。
物的労働生産性と付加価値労働生産性の計算方法について以下にまとめました。

(1)物的労働生産性の計算方法

物的労働生産性は、ある期間における全生産物の数量を、その期間の労働時間数で割ることで計算されます。
この計算方法は、主に製造業など物理的な製品を生産する業種で用いられます。具体的な計算式は以下の通りです。

物的労働生産性=生産量/労働時間

生産量は製品の単位数や重量で測定され、労働時間は従業員が生産活動に費やした合計時間です。
この指標により、労働時間あたりの生産量の多さを評価できます。

(2)付加価値労働生産性の計算方法

付加価値労働生産性は、製品の販売から得られる付加価値を労働時間で割って計算されます。これにより、労働時間あたりにどれだけの経済的価値を創出しているかを測定します。計算式は以下のようになります。

付加価値労働生産性=付加価値/労働時間

付加価値は、製品やサービスの販売収入から直接的な製造コストや材料コストを差し引いたものです。この指標は、特にサービス業や知識集約型産業において重要視されます。

4.日本の労働生産性が低い理由

日本は他国にくらべて労働生産性が低いと言われています。

実際、主要7カ国では最下位。OECD(経済協力開発機構)加盟国の中では38ヵ国中27 位で、国際水準に追いついていません。

日本の労働生産性が劣っている理由についてまとめました。

(1)長時間労働で非効率

日本では長時間労働が常態化していることが多く、それが生産性の低下につながっています。
長時間労働は労働者の疲労を増大させ、効率的な仕事の進行を妨げることがあります。また、必要以上の時間を労働に割くことで、生産出力に対する時間あたりの効果が低下します。

(2)サービス業・小規模事業が多い

日本の産業構造はサービス業や小規模事業が多くを占めています。
これらの業界では、生産性の向上が難しい傾向にあり、特に人的サービスが中心の業務では作業の自動化や効率化が進みにくいです。

(3)人材活用ができていない

日本の労働市場は、正社員と非正社員の間に大きな格差が存在し、労働力の柔軟な配置や効率的な活用が難しい状況にあります。
また、雇用の安定を重視する文化が、職場での役割の固定化やキャリアの流動性の低下を招き、イノベーションや効率の向上を妨げる要因となっています。

(4)技術導入とデジタル化の遅れ

日本企業の中には、最新のテクノロジーの導入が遅れているところが見受けられます。
デジタルツールや自動化技術の利用が進んでいないため、作業効率の向上が十分には行われておらず、生産性の低下に繋がっています。

ただし、これらの前提として、日本が戦後の高度経済成長期以降、小規模事業者を優遇してきた点は見逃せません。

例えばアメリカの場合、労働者の50%は大企業に勤務しています。大きな組織が主流なのでその分労働生産性は向上しやすい環境と言えます。

一方、日本では大企業に勤務する人は労働人口の1割。大多数の労働者は中小企業や小規模な組織で働いています。

国単位の労働生産性を考える上では、現状の課題だけでなく、歴史的背景や要因分析にも注目すべきです。

5.企業が労働生産性を上げるためには

国際水準から見ると日本の労働生産性は低いものの、企業単位で改善できるポイントは多数あります。

組織レベルで労働生産性を向上するためのヒントとして5つまとめました。

  • 最新技術の導入
  • 柔軟な働き方の導入
  • スキルアップの機会提供
  • 業務プロセスの見直しと最適化
  • 評価システムの見直し

(1)最新技術の導入

最新のテクノロジーやデジタルツールを積極的に導入することで、作業の自動化や効率化を図ります。例えば、人工知能(AI)を活用したデータ分析やロボティクスを使用した製造プロセスの自動化などがあります。これにより、時間を要する繰り返し作業を削減し、従業員がより創造的かつ戦略的な業務に集中できるようになります。

(2)柔軟な働き方の導入

テレワークやフレックスタイムなど、柔軟な働き方は従業員のワークライフバランスを改善し、働きやすい環境を提供します。
多様なライフスタイルを尊重することで、従業員の満足度とモチベーションが向上し、結果として生産性が高まります。

(3)スキルアップの機会提供

従業員に対する継続的な教育プログラムやスキルアップの機会を提供することで、最新の業界動向や技術に対応できる資質の高い労働力を育成します。
人材育成を強化することで、企業の競争力が向上し、効率的な業務遂行が可能となります。

(4)業務プロセスの見直しと最適化

現行の業務プロセスを定期的に見直し、非効率な部分を排除することも欠かせません。
業務の標準化や無駄を削減することにより、リソースの最適な配分が可能となり、全体的な業務効率が向上します。

(5)評価システムの見直し

成果主義に基づいた評価と報酬システムを導入することで、従業員の目標達成に対する意欲を刺激します。
個々の貢献を公正に評価し、適切なインセンティブを提供することで、生産性の向上を図ることができます。

まとめ

物的労働生産性と付加価値労働生産性は、それぞれ異なる産業や業務の特性に応じて重要な洞察を提供します。
労働生産性の向上は、単に経済的な利益を追求するだけでなく、働く人々の生活の質を高め、社会全体の福祉を改善するためにも極めて重要です。
本記事の内容が、労働効率を最大化し、持続可能な成長を達成するために活用いただければ幸いです。