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残業時間の定義とは?時間外労働の上限や割増賃金の種類も解説

残業時間の定義とは? 未分類

給与計算や勤怠管理業務と関連の深い残業時間。
残業時間に関する理解と適切な管理は、労働者の健康、生活の質、会社の生産性に直接影響を与えます。
この記事では、残業時間の基本的な定義から、時間外労働の上限、割増賃金の種類に至るまで、幅広く解説します。

1.残業時間の基本

残業時間には「法定外労働時間」と「所定外労働時間」の二種類が存在します。

それぞれの違いについて以下で解説します。

(1)法定外労働時間とは

残業時間というと、多くの人は長い労働時間や遅い帰宅を思い浮かべるかもしれません。
しかし、この言葉の定義は法的に決められています。
「法定外労働時間」とは、労働基準法において定められた、所定の労働時間を超える労働のことを指します。
労働基準法では、一般的に1日8時間、週40時間が所定労働時間とされています。
この時間を超えて働く場合、その労働は法定外労働時間と見なされ、割増賃金の支払いが義務付けられています。

(2)所定外労働時間とは

「所定外労働時間」とは、労働契約や会社の規則で定められた通常の労働時間を超える労働を指します。
例えば、ある会社では1日7時間労働と定めている場合、7時間を超える労働は所定外労働時間に該当します。

所定外労働時間には割増賃金が義務付けられていません。
そのため、7時間を超え8時間までの労働については、「所定外ではないので割増賃金を払わない」という企業も存在します。
8時間を超える労働は法定時間外労働として割増賃金が適用されます。
労働時間に関する規定は企業ごとに異なるため、各社の規則や労働契約を正確に理解することが重要です。

2.残業時間の上限制限と働き方改革

(1)以前は残業時間の上限なし

働き方改革関連法の施行以前は、残業時間に法律上の上限が設定されていませんでした。
そのため、長時間労働が常態化し、過労死や健康問題を引き起こすケースも少なくありませんでした。
労働者の健康と安全を確保するためにも、残業時間に対する規制の必要性が高まる中、法改正が進められたのです。

(2)残業時間の上限は「月45時間・年360時間」

働き方改革関連法の施行により、残業時間についての重要な変更が行われました。
これにより、原則として月45時間、年間360時間を超える残業は禁止に。
特別な事情がある場合でも、月100時間未満、年720時間未満という条件が設けられました。
この変更は、労働者の健康を守り、ワークライフバランスを改善するための重要なステップです。

(3)労働時間の管理・把握が必須になった

働き方改革では、労働時間の適切な管理と把握が一層強調されました。
企業は労働者の勤務時間、休憩時間、残業時間を正確に記録し、適切に管理するよう義務付けられています。
労務管理の透明性の向上は、法令遵守だけでなく、労働者の労働環境の改善にも寄与します。

(4)管理職の労働時間も管理が義務化

働き方改革のもう一つの重要な側面は、管理職を含む全ての労働者に対する労働時間管理の義務化です。
従来、管理職や一部の専門職には残業時間の管理について緩かった部分もありました。
労働安全衛生法の改正により、管理監督者の労働時間も厳格に管理することが求められるように。
立場に関係なく、働く人々の健康維持と生活の質の向上が期待されています。

3.時間外労働と割増賃金

(1)残業時間を把握するには

残業時間は「法定労働時間(通常は1日8時間または週40時間)を超えた労働時間」として計算されます。
これには、定期的な労働時間を超えて行われた労働だけでなく、休日や深夜の労働も含まれる場合があります。
残業時間を計算する際には、始業時刻と終業時刻、休憩時間を正確に記録することが必要です。
これらの記録に基づき、実際に働いた時間を算出し、残業時間を確定します。
勤怠管理システムを活用することで、残業時間の把握が容易になります。

(2)法定外労働時間は25%割増

労働基準法では、所定労働時間を超える労働に対して、通常の賃金よりも25%以上の割増賃金の支払いが義務付けられています。
この割増率は深夜労働(22時から翌5時までの労働)や休日労働の場合にはさらに高くなることがあります。
割増賃金の制度は、残業を促進するものではなく、むしろ労働者を過度な労働から守り、適切な報酬を保証するためのものです。
状況別の割増率を以下の表にまとめましたので参考にしてください。

残業の種類割増率
法定外労働時間(時間外労働)25%
1ヶ月60時間超の時間外労働50%
深夜労働(22~5時)25%
時間外労働かつ深夜労働50%
1ヶ月60時間超の時間外労働かつ深夜75%
法定休日労働35%
法定休日労働かつ深夜60%

4.残業時間を管理するうえでの注意点

(1)残業の実態を把握する

残業時間の管理は、スタッフの働き方を正確に把握することからスタートです。
スタッフがどのようなタスクにどれくらいの時間を費やしているのか、どのタイミングで残業が発生しているのかを理解する必要があります。
残業の原因を把握することで、労働環境の改善や業務の効率化を図ることが可能になります。
残業が健康やプライベートに与える影響も考慮し、労働者のワークライフバランスの維持に努めることが重要です。

(2)就業規則を明確化する

効果的な残業時間の管理には、明確な就業規則が不可欠です。
就業規則には、残業に関する方針、手続き、割増賃金の計算方法などが含まれるべきです。規則を透明かつ詳細に設定し、すべての従業員が理解しやすい形での共有が求められます。
特に残業承認のプロセスや残業の限度については、具体的に定めることで労働トラブル防止に繋がります。

(3)残業時間は1分単位で記録する

残業時間の管理には、労働時間の正確な記録が欠かせません。
1分単位での記録が推奨される理由は、僅かな時間でも労働者の負担となり得るからです。この精度を保つためには、タイムカードや勤怠管理システムの活用が効果的です。
1分単位の記録により、残業時間が正確に反映され、労働者に対する公正な賃金の支払いが可能となります。

まとめ

残業時間の適切な管理と割増賃金の適正な支払いは、働く人々にとって必要不可欠です。
残業に関する基本的な知識と、労務管理の重要性がおわかりいただけたかと思います。
働き方改革の流れの中で、これらの情報を労働環境の改善にぜひ役立ててください。