有給休暇は働く人々の生活の質を向上させ、働きやすい環境を作り出すために非常に重要です。この記事では有給休暇の基本、その取得条件、さらには勤務形態や立場別の有給休暇付与日数について解説します。
企業の人事・労務担当者の方はぜひ参考にしてください。
1.有給休暇の基本
有給休暇は、勤務形態に関係なく、要件を満たす全ての従業員に付与されます。
正社員の場合、有給休暇の付与日数は勤続年数に応じて増加し、入社6ヶ月で10日、1.5年で11日、2.5年で12日と増え、最大で20日になります。
パートやアルバイトの場合、週所定労働日数に基づき比例付与されます。
(1)有給休暇が付与されるタイミングは6ヶ月後
フルタイム(週5日)で働く新入社員は、入社から6ヶ月を経過すると10日の有給休暇が付与されます。
そこから継続勤務年数が1年経過するごとに付与日数が増えていきます。
具体的には以下のとおりです。
継続勤務年数(年) | 付与日数(日) |
0.5(6ヶ月) | 10日 |
1.5 | 11 |
2.5 | 12 |
3.5 | 14 |
4.5 | 16 |
5.5 | 18 |
6.5以上 | 20 |
アルバイトやパートなど、週の所定労働日数が4日以下かつ週の所定労働時間が30時間未満で働くスタッフについては、上記とは別の基準で付与日数が決まります。
また、企業によっては半年経たずに入社時点で有給休暇を付与するケースもあります。
(2)有給休暇が付与される要件
有給休暇の付与要件は「雇用されて6ヶ月以上経過していること「その期間の8割以上出勤していること」の2つです。
これは、従業員が一定の勤務期間と出勤率を満たすことで、有給休暇を取得する権利を得るための基準です。
この規定は、従業員が安定して職場に貢献していることを確認し、その貢献に報いる意味も含んでいます。
出勤率の計算においては、全労働日の数を基に出勤した日数を割ります。
ここでの「全労働日」とは、実際に労働すべき日の総数を指し、公休日、法定休日、企業が定める休日は含まれません。
また、「出勤日」としてカウントされるのは、通常の勤務日のほか、年次有給休暇を取得した日、産前産後の休業日、育児休業や介護休業を取得した日なども含まれます。
特に、産前産後休業や育児・介護休業中は、これらの休業日も出勤日として計算されるため、有給休暇の付与要件を満たしやすくなります。
以上の要件を満たした従業員は、有給休暇を取得する資格を得ることができます。
企業側は、これらの要件に基づき適切な管理を行うことが必要です。
2.働き方改革で登場した「有給休暇の取得義務」とは
2019年4月から全ての使用者に対して「年5日の年次有給休暇の確実な取得」が義務付けられていることです。
この制度は、労働者の心身のリフレッシュを図るためにあります。
具体的には、以下の労働者が対象です。
- 入社後6ヶ月経過した正社員またはフルタイムの契約社員
- 入社後6ヶ月が経過している週30時間以上勤務のパート・アルバイト
- 一定の週30時間未満勤務のパート・アルバイト
この制度に違反した場合、違反者一人に対して最大で30万円の罰金が科されます。
違反者数が100名いれば3000万円の罰金が発生する可能性も。
企業は適切な対策を講じることが重要です。
有給休暇の取得を促進するためには、計画的な付与や取得推奨日の設定、労働者への説明などが有効です。
詳細な法令解説や具体的な対応方法については、厚生労働省の公式資料をご参照いただくことをおすすめします。
3.勤務形態や立場別の有給休暇付与日数
勤務形態や立場に応じて、有給休暇の付与日数は異なります。
人事・労務担当者はこれらの規定を理解し、適切に管理しましょう。
従業員が安心して働ける環境を提供し、全員が公平に休暇を享受できることが重要です。
(1)正社員の場合
正社員の有給休暇の付与日数は、勤続年数に応じて段階的に増加します。
入社して最初の半年後に10日の有給休暇が付与され、その後、継続勤務年数が増えるごとに付与日数も増えていきます。
例えば、勤続年数が1.5年の場合は11日、2.5年で12日、4.5年で16日となり、6.5年以降は20日が最大です。
従業員の勤務意欲や忠誠心を高め、長期的な勤務を促進するため、このような日数となっています。
(2)パート・アルバイトの場合
週所定労働日数が4日以下かつ週所定労働時間が30時間未満のパートやアルバイトは、有給休暇日数型比例的に計算されます。
例えば、週4日勤務の場合、半年間の勤続で7日、1.5年で8日の有給休暇が付与されるといった形です。
週の労働日数と勤続年数ごとの有給休暇日数は以下の表を参考にしてください。
週の労働日数 | 4日 | 3日 | 2日 | 1日 |
勤続半年 | 7日 | 5日 | 3日 | 1日 |
勤続1.5年 | 8日 | 6日 | 4日 | 2日 |
勤続2.5年 | 9日 | 6日 | 4日 | 2日 |
勤続3.5年 | 10日 | 8日 | 5日 | 2日 |
勤続4.5年 | 12日 | 9日 | 6日 | 3日 |
勤続5.5年 | 13日 | 10日 | 6日 | 3日 |
勤続6.5年 | 15日 | 11日 | 7日 | 3日 |
(3)産休育休・介護休業中の場合
産休育休や介護休業を取っている期間は通常勤務と同じように扱われ、有給休暇の付与対象となります。
つまり、産休や育休中に勤続年数が増えれば、その分、有給休暇の付与日数も増加します。家庭の事情で長期休業を取った従業員も、職場復帰後に十分な休暇を取ることが可能です。
4.有給休暇の取得率を向上させるメリット
有給休暇の取得率を向上させることは、単に従業員の福祉を向上させるだけでなく、企業の生産性と競争力を高めるための重要な戦略です。
取得率を向上させるメリットを3つ紹介します。
(1) 人材確保と定着率アップ
有給休暇の取得を促進することは、企業が質の高い人材を確保し、定着率向上に繋がります。
休暇を取りやすい環境は、職場に対する満足度を高めます。
休暇取得を奨励する企業は、潜在的な応募者にとって魅力的です。
求職者からの人気が高まれば、才能ある人材を引き寄せやすくなります。
また、従業員が充実したプライベートを持つことは、職場におけるモチベーションやエンゲージメントの向上につながり、企業の全体的な競争力強化に貢献します。
(2) メンタル不調の防止
有給休暇の取得は、従業員のメンタルヘルスを守るために重要です。
適切な休息とリフレッシュの機会は、ストレスの軽減や燃え尽き症候群の予防、全般的な幸福感の向上に寄与します。
休暇を通じて従業員がリラックスし、エネルギーを回復できることで、メンタル不調による長期欠勤や生産性の低下を予防することができます
(3)生産性の向上
有給休暇の積極的な取得は、労働生産性の向上に直結すると言っても過言ではありません。
従業員が休暇を取ることで、ストレスが軽減され、仕事への集中力が高まります。
また、定期的な休息は創造性の向上にも繋がり、新しいアイデアや改善策を生み出す可能性を高めます。
休暇取得の促進は、単に仕事からの一時的な逃避ではなく、長期的なパフォーマンスと企業の成長に寄与する戦略的な取り組みとして重視すべきです。
まとめ
有給休暇は、働く人の幸せと仕事の効率を良くするための大切な制度です。
会社が有給休暇をうまく管理し、休暇取得を推進することで、従業員が仕事に満足し、やる気を保つ手助けになります。
大切なのは、従業員が自分の休みの権利を把握し、企業もそれを尊重することです。
健全な労働環境の維持と推進は、単に個々の企業の責任に留まらず、社会全体で取り組むべき課題と言えるでしょう。
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