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給与計算の基本をおさらい!計算方法や注意点を解説

給与計算の基本をおさらい! 未分類

給与計算は、企業の経営と従業員の生活において重要です。
従業員に正しく給与を支払うためには、計算の基本や控除額について知る必要があります。
この記事では、給与計算の基本的な要素と計算方法、さらに注意点について、わかりやすく解説します。
従業員だけでなく、経営者や人事担当者の方も参考にしてください。

1.給与計算とは

給与計算は、従業員に対して正確な給与を支払うための重要なプロセスです。
給与計算の中には基本給の計算、残業代の算出、各種手当の加算、そして税金や社会保険料などの控除が含まれます。
正確な給与計算は、従業員のモチベーション維持や企業の社会的信頼、安定した経営に直結しています。
給与を構成する要素について、以下でまとめました。

(1)基本給

基本給は、従業員が定期的に受け取る固定給のことです。
この金額は通常、職務の内容、経験、技能、資格などに基づいて決定されます。
基本給は、時間外労働や特別な手当を含まない、純粋な労働対価の基盤となるものです。

(2)時間外手当

時間外手当は、従業員が通常の勤務時間を超えて労働した場合に支払われる追加の給与です。
労働基準法によって時間外労働のルールが定められており、通常の時給よりも高い割増賃金が設定されています。
日本では1.25倍以上の割増率が一般的です。

時間外手当の割増率については以下の表を参考にしてください。

種類割増対象となる時間割増率
法定時間外労働法定労働時間である1日8時間
週40時間を超えた労働時間
25%以上
1ヶ月60時間を超える分の時間外労働
(2023年4月1日から適用)
50%以上
法定内残業会社で定められた労働時間を超えているが、労働基準法で定められた法定労働時間は超えていない分の残業0%以上
深夜22時から5時までの間の労働時間25%以上
休日(法定)法定休日(週1日)における労働時間35%以上
休日(法定外)会社で定めた休日(所定)における労働時間0%以上(法定時間外に及ぶ場合25%以上)

(3)各種手当

住宅手当、通勤手当、家族手当、役職手当など、様々な形態があり、企業によって異なります。
これらは、従業員の勤務状況、家族構成、職務内容、居住地域などに応じて付加されるもので、基本給以外の追加収入源となります。

(4)控除額

控除とは「一定の金額を差し引く」という意味です。
控除額は、給与から差し引かれる金額のことを指します。
これには所得税、社会保険料(健康保険、年金保険など)、住民税、その他の強制的な控除が含まれることが一般的です。
控除額は従業員の年収、扶養家族の有無などに基づいて計算されます。

2.給与計算の方法

(1) 総支給額の算出

総支給額は、以下の式で計算されます。

総支給額 = 基本給 + 時間外手当 + 各種手当

  • 基本給: 従業員の契約に基づく固定給
  • 時間外手当: 法定労働時間を超えた労働に対する手当
  • 各種手当: 通勤手当や役職手当など、企業によって設定される追加給

(2)控除額の算出

控除額には、以下の項目が含まれます。

控除額 = 税金 + 社会保険料 + その他控除

  • 税金: 所得税や住民税など、法律に基づく税金
  • 社会保険料: 健康保険料や厚生年金保険料など
  • その他控除: 社宅利用費や組合費など、企業によって設定される控除項目

(3)手取り額の算出

最終的な手取り額は、総支給額から控除額を差し引いた金額となります。

手取り額 = 総支給額 – 控除額

3. 給与計算で控除される「社会保険料」とは

 社会保険料は、健康保険、年金保険、雇用保険など、従業員の社会保障を目的とした費用のことです。
ほとんどの社会保険制度では、雇用者と従業員が保険料を共同で負担します。
社会保険料の計算は通常、従業員の給与に基づいて行われます。給与の総額が多いほど、支払う保険料も増加することが一般的です。
以下で社会保険料の種類や、金額の大まかな目安について紹介します。

(1)健康保険

健康保険は、病気やけがの際に医療費の負担を軽減することを目的としています。医療機関での治療費の一部を保険でカバーし、残りは患者が自己負担します。
保険証を提示することで、医療機関での診療時に保険適用が可能です。

健康保険料は、従業員の給与に基づいて計算されます。
保険料率は所属する健康保険組合や居住地域によって異なります。
一般的には給与の約10%前後が目安です。
雇用者と従業員で半分ずつ負担します。

(2)厚生年金保険

 厚生年金は日本の公的年金の1つです。公的年金として、厚生年金の他に国民年金が存在します。

国民年金は20歳以上のすべての人が加入する年金制度ですが、厚生年金は社会人や公務員が勤務先を通じて加入する年金制度です。
厚生年金加入者は将来的に国民年金と厚生年金の両方から年金が受け取れます。

厚生年金保険料も給与に基づいて計算されます。
こちらも保険料率は変動しますが、給与の約18%程度が一般的です。
雇用者と従業員が半分ずつ負担します。

 (3)雇用保険

雇用保険は、失業した場合に一定期間、給付金を支給し、再就職を支援するための制度です。
失業時に給付金が支払われ、職業訓練や就職支援サービスも提供されます。
雇用保険料は、雇用者と従業員が負担しますが、その比率は業種によって異なります。
一般的には給与または賞与の0.6%が本人負担、0.95%が会社負担となります。

(4)社会保険の計算例

以下、月給300,000円の場合に社会保険料がどのくらいになるのかをまとめました。
実際には標準報酬月額の等級などによって保険料率が変わりますが、おおよそ計算すると以下のとおりです。

①健康保険料:

300,000円 × 10% = 30,000円(雇用者と従業員が折半)
→従業員の自己負担は15,000円

②厚生年金保険料

300,000円 × 18% = 54,000円(雇用者と従業員が折半)
→従業員の自己負担は27,000円

③雇用保険料

300,000円 × 0.6% = 1,800円(従業員の自己負担分)

【補足】介護保険・労災保険について
社会保険にはこれら以外に「介護保険」や「労災保険」があります。
介護保険は40歳以上に加入が義務付けられています。
将来介護が必要になった際、原則1割負担で介護サービスが受けられる制度です。
保険料率は月給の1.82%なので、月給30万円の場合で5,460円です。
労災保険は就業中や通勤中の事故、怪我、災害などに対して給付され、保険料は企業が全額負担します。

4.給与計算の注意点

給与計算を行う際に、ミスはあってはならないもの。
給与支払のタイミングが遅れるのも企業の信頼失墜に繋がりかねません。
給与計算業務における注意を以下にまとめました。

給与計算業務は複雑であり、多くの法律や規則を遵守する必要があります。適切に行うためには、以下のような注意点を考慮することが重要です。

(1)正確なデータの入力と保持

 従業員の給与に関わるすべてのデータ(基本給、時間外労働時間、手当など)は正確に入力し、記録する必要があります。
これらのデータは法的要件に基づき一定期間保持する必要があります。
給与情報の適切なセキュリティ対策とプライバシーの保護にも注意してください。

(2) 就業規則の遵守

 労働関連の法律(最低賃金法、労働基準法など)、税法、社会保険関連法規を遵守することは必須です。最低賃金は地域によって異なり、時には変更されることがあるため、常に最新の情報を把握しましょう。
また、給与計算は労働契約や社内規定に基づいて行う必要があります。
契約条件を遵守した適切な運用が求められます。

 (3)賃金支払い5原則の遵守

労働基準法第24条では、賃金の支払いについて定められています。
賃金は「①通貨で、②直接労働者に、③その全額を、④毎月1回以上、⑤一定の期日を定めて」支払う必要があります。
賃金支払い5原則に反する場合は30万円以下の罰金が科せられるため注意しましょう。

まとめ

給与計算はさまざまな法律や社内規定が関わります。
この記事を通じて、給与計算の基本と考慮事項を理解し、正確な給与計算を行う重要性を認識していただければ幸いです。
正確な給与計算は、企業の信頼性を保ち、従業員の満足度を高める鍵となります。
常に法律の変更に注意し、適切な方法で給与計算を行うことを心掛けましょう。