「勤怠管理」とは、企業と従業員にとって基本中の基本です。
ただしその実践方法には多くの疑問や法的な側面が伴います。
特に、15分単位での勤怠管理に関しては、多くの誤解や不安が存在します。
本記事では、「15分単位で勤怠を管理することは違法なのか?」という疑問に焦点を当て、その背景、法的規定、そして正しい運用方法について解説します。
従業員の権利と企業の義務のバランスを保つために、正確で公平な勤怠管理がいかに重要かを探求します。
1.15分単位の勤怠管理は違法
結論、勤務時間や残業時間を15分単位で管理し、15分に満たない場合切り捨てるのは労働基準法に反します。
例えば、勤務時間が9時〜18時(休憩1時間:実労働8時間)の会社で19時14分まで残業した場合、本来であれば1時間14分残業したところを、1時間しか残業していないことにするのは違法です。
勤怠管理は原則1分単位で行うことが定められており、遅刻・早退時間の管理も同様です。
2.勤怠を1分単位で管理する4つの理由
正確な給与支払いを保証するためにも、労働時間は1分単位で管理する必要があります。
これは、労働基準法に基づくもので、労働者が実際に働いた正確な時間に対して適正な報酬を受け取る権利を保護します。
労働時間の1分単位での管理が重要な理由を以下で説明します。
(1) 正確な労働時間の把握
1分単位で労働時間を計算することで、従業員が実際に働いた時間が正確に反映されます。働いた時間に見合った正確な報酬を計算するために不可欠な要素です。
(2)労働者の権利の保護
従業員が働いた全ての分に対して報酬を支払うことは、労働者の権利を守る上で非常に重要です。
これにより、たとえ短時間でも無報酬での労働が防がれます。
(3) 法的遵守
労働基準法やその他の労働関連法規は、労働者が適正な報酬を受け取ることを保証しています。
1分単位での労働時間計算は、これらの法律に対する遵守を示すものであり、法的なトラブルを避けるためにも必要です。
(4) 透明性と信頼性の確保
1分単位で労働時間を記録することで、勤怠管理の透明性が高まります。これは従業員と雇用者の間の信頼関係を構築し、労働関連の紛争を予防する助けとなります。
ただし、実際の職場では、勤怠の取り扱いについての具体的な取り決めや、業種によっては特定の例外が適用されることもあります。それでも基本原則として、労働時間はできる限り正確に計算されるべきです。
3.「打刻まるめ」の運用も違法
「打刻まるめ」とは、従業員が実際に働いた開始時間や終了時間を、あらかじめ設定された一定の単位に合わせて切り上げたり切り下げたりする管理手法です。
特に電子タイムカードや勤怠管理システムで一般的に使用されています。
例えば、会社が15分単位で打刻をまるめるポリシーを採用している場合、従業員が8:07に出勤したとしても、勤怠記録では8:15として処理されることがあります。
同様に、17:52に退勤した場合は17:45として記録されることもあります。
この方法は、わずかな時間差を無視して勤怠管理を簡素化する目的で採用されますが、不適切に実施されると従業員の労働時間が不正確に記録され、結果として未払い労働が発生するリスクがあります。
労働基準法では、労働者が働いた全ての時間に対して適正な報酬を支払うことが義務付けられています。
「打刻まるめ」が労働者に不利な形で運用された場合、法的な問題が生じる可能性も。
企業は、このような勤怠管理方法を採用する際には、従業員の権利を尊重し、適法性を十分に検討する必要があります。
4.「月単位」なら15分切り捨てでもOK
ここまで、1分単位の勤怠管理以外は違法であることをお伝えしました。
これは毎日の勤怠管理の話ですが、1ヶ月単位の残業手当の計算についてはルールが異なります。
以下で詳しく紹介します。
(1)日々の労働時間は1分単位がマスト
毎日の労働時間は1分単位で記録し、給与計算に反映させる必要があります。
労働時間を常に切り捨てると、切り捨てた分の賃金は未払いとなり、労働基準法に反します。
残業時間についても、15分単位や30分単位での管理は違法です。
1日ごとの労働時間は1分単位で管理しましょう。
(2)賃金計算(1ヶ月総計)では15分単位切り捨てOK
給与計算をする際に1ヶ月総計の残業時間をもとに割増賃金を算出します。
このタイミングでの15分単位や30分単位での切り捨ては事務作業の簡便化として認められます。
<参考>割増賃金計算における端数処理
次の方法は、常に労働者の不利となるものではなく、事務簡便を目的としたものと認
められるから、法第24条及び第37条違反としては取り扱わない。
①1ヶ月における時間外労働、休日労働及び深夜業の各々の時間数の合計に1時間未満の端数がある場合に、30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げること。
②1時間当たりの賃金額及び割増賃金額に円未満の端数が生じた場合、50銭未満の端数を切り捨て、それ以上を1円に切り上げること。
③1か月における時間外労働、休日労働、深夜業の各々の割増賃金の総額に1円未満の端数が生じた場合、②と同様に処理すること。
詳しくは以下をご覧ください。
まとめ
勤怠管理は、法的規定の遵守だけでなく、従業員の権利と企業の責任の間でバランスを取ることが重要です。
この記事を通じて、15分単位の勤怠管理に関する誤解を解消し、適正な労働環境の実現に役立ててください。
各企業は、法律に準拠しつつ、従業員の働きやすい環境を提供するために、勤怠管理システムの適切な運用を心がける必要があります。
勤怠管理は単なる時間の記録ではなく、従業員の働く権利を守り、企業の公正な運営を支える基盤です。
適切な勤怠管理を通して、働きやすさ向上に繋げていきましょう。
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