働き方改革が提唱されて以降、各企業が経営課題の一つとして推進に取り組んでいることと思います。
この記事では、働き方改革とは何なのか、目的や具体的な法改正について紹介し、積極的に進めるメリットを紹介します。
働き方改革の全体像を掴めるような構成にしてありますので、ぜひお役立てください。
1.働き方改革とは
「働く人たちが、それぞれの事情にあわせて、多様な働き方を選択できる社会」を実現するための取り組みが働き方改革です。
2019年以降、働き方改革関連法が施行され、時間外労働の上限規制や有給休暇取得の推進などが実施されています。
働き方改革は大企業だけでなく中小企業にも取り組みが求められており、年々対象企業は拡大しています。
尚、働き方改革関連法には以下の法律が該当します。
2.働き方改革が必要とされる背景
(1)生産年齢人口の減少
出典:内閣府 令和4年版 高齢社会白書(全体版)
働き方改革が進められた背景として、労働人口の減少が挙げられます。
日本では15歳以上65歳未満の「生産年齢人口」が年々減少し、人材確保・人手不足が困難になっています。
生産年齢人口は1995年にピークを迎え、8,726万人まで増加しました。
しかし翌年以降減少に転じており、2023年は約7,500万人。
約30年間で1,000万人減っています。
2029年には7,000万人を下回ると推測されており、今後も長期的な減少は避けられません。
生産年齢人口の減少は日本全体の生産力低下に直結する問題です。
生産力回復のためにも働き方改革は必要不可欠と言えます。
(2)労働者のニーズの変化
男女雇用機会均等法が施行されて35年あまり。
日本では女性の社会進出が進み、働き方のニーズが多様化しました。
子育てや介護との両立、テレワークなどを叶えることも働き方改革に求められています。
多様な働き方が選択できる社会によって、働く人々がよりよい将来の展望を持てることを目指しています。
3.働き方改革の目的
(1)労働人口増加
前述した生産年齢人口の減少に伴い、労働人口(15歳以上のうち就業者と完全失業者をあわせた人口)も減少し続けています。
女性の社会進出が今以上に活発になった上、65歳以上のシニア層が労働市場に参加したとしても、2060年には1,200万人の減少が見込まれる状況です。
少ない労働人口でも個々が活躍できる土壌を作ることが、経済発展を続けるための鍵を握ります。
(2)出生率の上昇
少子高齢化や労働人口減少を食い止めるのに不可欠なのが、出生率の上昇です。
出生率は人口千人に対する出生数の割合を指します。
特に重要なのが、合計特殊出生率(15〜49歳までの女性の年齢別出生率を合計したもの)です。
合計特殊出生率は2005年に過去最低の1.26を記録し、その後徐々に回復傾向だったのが、コロナ禍もあり2022年は1.26。再び過去最低を記録しています。
働く女性が増えたことで、仕事と育児を両立する難しさ、産後復帰しづらい職場環境などの問題が浮き彫りに。出産に消極的な女性が増える結果となりました。
女性が働きやすい環境を整備し、出生率上昇に繋げるのも働き方改革のねらいの一つです。
4.働き方改革関連法で何が変わった?
働き方改革関連法は2019年以降施行されており、職場環境に大きな変化をもたらしています。
代表的なものを以下にまとめました。
- (1)時間外労働の上限規制
- (2)時間外労働の割増賃金率引き上げ
- (3)年次有給休暇の時季指定
- (4)フレックスタイム制の改正
- (5)高度プロフェッショナル制度
- (6)同一労働・同一賃金
- (7)産業医・産業保健機能の強化
次の項目からそれぞれ説明します。
(1)時間外労働の上限規制
大企業では2019年4月から、中小企業では2020年4月から、時間外労働に上限規制が設けられました。
これにより、1ヶ月あたり45時間、年360時間を超える残業はできなくなりました。
また、臨時的な特別な事情があっても、年720時間、複数月平均80時間以内を超える事はできません。
中小企業かどうかは①または②を満たすかどうかで判断されます。
業種 | ① 資本金の額または出資の総額 | ② 常時使用する労働者数 |
小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
上記以外のその他の業種 | 3億円以下 | 300人以下 |
(2)時間外労働の割増賃金率引き上げ
従来、月60時間を超える残業の割増賃金率は、大企業で50%、中小企業で25%でした。
2023年4月以降、中小企業でも50%に変わります。
(3)年次有給休暇の時季指定
年次有給休暇付与日数が10日以上の従業員には、毎年5日確実に休暇を取得させる必要があります。
正社員やアルバイトなどの雇用形態に関係なく、全ての従業員が対象です。
(4)フレックスタイム制の改正
これまでフレックスタイム制の労働時間は1ヶ月の間で清算する必要がありました。
法改正によってこれが3カ月に延長され、より柔軟に労働時間を調整できます。
(5)高度プロフェッショナル制度
高度プロフェッショナル制度は、研究職や技術職など、高度な専門知識を要する業務の場合に自由な働き方を認める制度です。
労働時間や休日、割増賃金などの規定を適用せず裁量労働を認めることで、成果に応じた評価や収入が得られる仕組みを整えました。
対象者は働く時間を自分で調整できるので、労働生産性向上やワークライフバランス実現が期待されています。
(6)同一労働・同一賃金
アルバイトや契約社員、正社員などの雇用形態にかかわらず、同じ仕事内容なら同じ賃金を支払うべき、とするのが「同一労働・同一賃金」です。
企業には公正な待遇や人事評価制度を導入することが求められます。
(7)産業医・産業保健機能の強化
日本では以前から長時間労働による健康への影響が指摘されていました。
2〜6ヶ月の間で時間外労働が月80時間を超えると病気になるリスクは大幅に高まるとされています。
労働安全衛生法の改正により、産業医との健康相談や指導が強化され、労働者の健康確保が重視されることになりました。
5.働き方改革に取り組むメリット
(1)人材確保&定着
働き方改革では、勤務スタイルの柔軟性、自由度を重視しています。
これまでの規則では活躍しづらかった人たちが活躍できる勤務形態を用意することで、
安定した人材確保が可能です。
また、働きやすい職場、融通が効く職場なら、従業員のモチベーションが上がり、会社に定着しやすくなる点も働き方改革のメリットと言えるでしょう。
(2)ワークライフバランス向上
フレックスタイム制、時間外労働削減、有給休暇の取得促進など、働き方改革はワークライフバランス向上にも直結します。
労働時間以外で趣味を楽しんだり、子育てや介護に励むなど、それぞれの生き方を尊重する働き方が可能になるのです。
(3)企業価値の向上
働き方改革への取り組みは企業価値向上に繋がります。
近年、企業のCSR(社会的責任)はますます重視されている状況です。
働き方改革を進めることは、社会の課題と向き合うこととイコールであり、社会貢献の側面も担います。
取り組みによって「子育て社員が活躍できる会社」「多様性を認める会社」といった印象が生まれ、企業のイメージアップとなるでしょう。
6.まとめ
働き方改革の概要や、なぜ働き方改革が必要なのか、目的と背景、具体的な変更点を紹介しました。
働き方改革は、長時間労働の上限規制や有給休暇取得、時間外労働の割増率変更など、勤怠管理に大きく影響します。
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今回ご紹介したことをふまえ、働き方改革を進めていきましょう。
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